00-4

「さあさ、べジータちゃん。いってらっしゃいな」
ブルマの母親はべジータの言うことをさっぱり聞いていないのか、ニコニコ笑いならがべジータの背中を柔らかく押した。
「きっとべジータちゃんがびっくりしちゃうような、素敵なブルマさんが待ってると思うわ」
「・・・?オレが驚くだと?おもしろい、あえて乗ってやろうじゃあないか」
べジータは誰にいうでもなく、つぶやくとブルマの気を探し、C.Cを飛び出した。

「いいなぁ、オレも行きたかったなぁ」
「うふふ、トランクスちゃんは邪魔しちゃだめよ」
「ちぇ!オレがママの協力をしたようなもんじゃないか。まぁ、ほとんどおばあちゃんがやってくれたけどさ・・・」

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ブルマは最後のチップを回収されていた。
たった15分で30万ゼニーが飛んでいってしまった。どうやらついていない日はとことんダメらしい。
ブルマはふてくされて席を立とうとしたが、ふとテーブルの「00」という数字が目に付いた。
その数字にピーンと閃くものがあった。
(なにかしら、この感じ・・・)
ブルマは小さなバッグの中をゴソゴソと探していたが、手持ちのお金は使い果たしてしまったようだった。
ブルマは少し考えると、右のイヤリングをはずし、「00」番の数字の上に置いた。
「ブルマさん、それは・・・」
「ルール違反だってんでしょ?わかってるわよ。いいじゃない、カタイこといわないの」
「ですが・・・」
ディーラーは困り果てたような顔をした。
ブルマでなければつまみ出すところだが、ここのホテルはC.Cの資本が入っているうえに、ブルマには普段からたくさんの金を落としてもらっている、特別なお客様だ。

「わかったわよ。じゃあ、あんたと賭けをしましょ。あたしが負けたらこのイヤリングをあんたにあげるわ。10臆ゼニーくらいはすると思うわ」
「・・・」
「そのかわり、あたしが勝ったら・・・」
そこまで言ってブルマはハタと気づいてしまった。
ブルマが欲しいと思うものは、この男に、いや、誰にもブルマに与えることが出来ないことに。
そう、あの男以外には・・・

「ブルマさんが勝ったら・・・?」
ディーラーの青年は、わがままなブルマが何を言い出すかと身構えるようにしている。
「・・・そうね」
ブルマは自分の顎に細い指を当てて、首をかしげた。
「そうね。あの男がいいわ」
ブルマの視線は、不機嫌そうな顔で近づいてくる一人の男を捕えていた。
「え?」
テーブルについていた客も、一斉にブルマの視線の先を探した。

全身が黒く覆われ、髪は逆立ち、眉間に思いっきり皺をよせ鋭い眼光を放っている男が、スタスタと近づいてきて、ブルマの後ろでピタリと止まった。
その雰囲気はただ事ではない。よく見ればタキシードだとわかるかもしれないが、なんせ悪人面だ。皆はC.Cの一人娘が殺し屋に命を狙われているんじゃないかと、恐る恐る様子を伺っている。
ブルマはニコッと笑うと、べジータを振り返らずに云った。
「素敵な賭けでしょ?あたしの欲しいものはこの男だけなの。だから、あたしが勝ったら・・・」
「・・・あたしのいう事はなんでも聞いてもらうわよ・・・ねぇ、べジータ」
ブルマの青い瞳にいたずらっぽい光が宿った。しかし視線は青年のディーラーに向けたままだ。
ディーラーはブルマが一瞬見せた、凄艶ともいえる表情にゴクリと唾を飲み込んだ。

「いいだろう、おもしろいゲームだ。せいぜい勝ちやがれ」
べジータは腕を組み、こちらもディーラーに視線をやった。

(この2人はどういう関係なんだろう?)
ただならぬ雰囲気に、いつのまにかギャラリーが増えている。
C.Cのわがままご令嬢が、暇つぶしに男でも賭けて遊んでいるとでも思われているのだろう。

ディーラーが円盤にボールを投げ入れた。
テーブルについていた他の客は、自分達のチップを置くことを忘れ、勢いよく回るボールをじっと見ている。
ブルマの勝つ確率は38分の1だ。
電子表示盤には赤の7番、赤の13番、黒の22番、黒の23番と続いている。
コロコロと転がるボールがスローになる。

-No more bet-

ブルマは全く負ける気がしなかった。
そうだ、今日だってべジータはやってきた。
何故か、既にタキシードを着ていたのは気になるところだが・・・・

突然、わああーという歓声が上がった。
ブルマが視線を戻すと、表示板に00とグリーンの文字が光っている。
「あ」
ブルマはべジータを振り返った。
べジータはブルマの顔を見るとニヤリと笑い
「貴様の勝ちだ」と云った。

片方のイヤリングがブルマの前に戻された。
「10臆ゼニーは残念でしたよ。でも、おめでとうございます、ブルマさん」
ディーラーの青年もにこやかに笑っている。

「お嬢さんよー!その男と何すんだい?」
「随分と男前なヤローじゃねぇか」
「そんな男なんてやめて、オレと遊ぼうぜー」
ギャラリーからも野次が飛ぶ。

「べジータ、あんたにあげるわ」
ブルマは方耳のイヤリングをべジータに向かってピンと弾き、ウインクをすると「私達のポタラよ」と云った。
「フン、カカロットにも云ったが、オレにはこんなもの必要ない」
べジータはイヤリングを握った腕をブルマに向けてまっすぐ伸ばした。

閃光がべジータの手を走り、ジュッという音と共にイヤリングがべジータの手から消えた。
「ちょっと・・・!」
「貴様は相変わらず馬鹿だな」
「フン、あんたには判らないでしょうね、ロマンチックな女の子の気持ちなんて」
「くだらん」
「くだらなくはないわよ!とにかく、あたしは勝ったの!云うことを聞いてもらうわよ」
ブルマは繭を吊り上げてべジータに迫った。
「すごい顔だな・・・。いいだろう、早く云え」
「あんたにいわれなくても云うわよ!そうね、まずあたしに誓いのキスをしてほしいわね」
「誓い?何のだ」
「ふっふっふっ」ブルマはいやらしく目を細め、べジータに向かい合うように立ち上がった。
「どお?今日のあたし綺麗でしょ?ウェディングドレスっていって、地球の女の子があこがれるものなのよ!」
(もっとも、あたしはあんまり興味なかったんだけどね)
「その妙な服は、貴様の部屋にあったノートに描いてあったものだろう。くだらんことを企んでいるとは思っていたが、貴様の云っていることは理解できんな」
「み、見たのね!やっぱりあんたがあのスケッチブックを持っていったんじゃないの!しっかりタキシードを着ちゃってるし」
「何のことだ。この妙な服は貴様の母親から渡されたものだ」
「母さんが?!」

「あれ?ブルマさんってこの方とご結婚するんですか?」
2人のやり取りを見ていたディーラーが、不思議そうに聞いた。
C.Cのご令嬢の婚約や結婚式ともなれば、財界や業界では大きく報道される。それがなんの情報も入ってこないので、てっきりブルマが独身だと思い込んでいた。
「結婚はしないわ。でもちょっと真っ白なウェディングドレスを着てみたくなっちゃったから、この男と記念写真でも撮ろうと思ったのよ」
「そうですか。それはいい」
青年のディーラーは近くのスタッフに耳打ちをすると、どこからともなく音楽が聞こえてきた。
髭をはやし、サングラスをかけた4人の男たちが、楽しげな音楽を奏でながら、ブルマたちのほうへ寄ってくる。
そして一旦曲が終わると、結婚行進曲を弾き始めた。
「あら・・・」
ブルマは気の利いたプレゼントに、思わず顔をほころばせた。
「べジータ」
べジータの鍛え上げられた腕に、ブルマは自分の腕をからませた。
「おい」
「云うこと聞くっていったでしょ」
そしてべジータの唇に、不意打ちのキスをした。

やんや、やんやとギャラリーは盛り上がっている。
べジータは見世物のようになっていることに耐えられずに、ブルマを抱えるとフワリと浮き上がり、吹き抜けになっている天井近くまで飛ぶと、近くの壁を気功波で派手に壊した。
ギャラリーはパフォーマンスだと思っているのか大喜びだ。
「べジータ!なんてことするのよ」
「フン」
「あ、ちょっとー!」
べジータはものすごいスピードで、ブルマを抱え飛び去った。
後には、ブルマの白いマリアベールがふわふわとホールへ落ちていき、近くにいた女の子が嬉しそうにそれを拾った。
演奏はまだやみそうにもない。


「あれ?オラどんくらい寝てたんだ?ブルマの奴もいねぇしさぁ」
ひと騒動あったあと、孫悟空は目をさました。どうやらべジータがこの近くへ来たようだが・・・

「ま、いっか」
孫悟空はいつものように軽い調子で笑った。






あとがき
あれ?ブルマとべジータのラブラブがないぞ。
それじゃ、次回は番外編を書くことにします。
18禁のラブラブにしましょう(><)

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