チェックメイト

第四章


朝日が昇るころ、ブリーフ博士は自宅のC.Cに戻ってきた。
「ブルマや。べジータ君は大丈夫そうじゃぁないか」
ブリーフ博士はメディカルマシーンの中を覗きこみ、診断機のモニターも同時にチェックした。
べジータの生命のリズムは正常に動きだしている。
あと数時間もすれば治療が完了するだろう。

「うん、でも・・・このマシーンはまだまだ改良の余地があるわ・・・」
ブルマは力なく云った。
「そうじゃなぁ・・・でもまぁ、よくやった。さすがはワシの娘じゃな。
重力室はワシが修理しておくから、お前はべジータ君の様子を見ていてやりなさい」
ブリーフ博士はそう云うとタバコをプカプカとふかしながら部屋を出て行った。


昨日からブルマは一睡もせずにいた。
一時はべジータを助けることが出来ないという絶望に襲われもしたが、
サイヤ人の持つ強い生命力は、再びべジータの心臓を動かし始めた。

ブルマは小さなテーブルに頬杖をついて、マシーンの液体の中にいるべジータをぼんやりと眺めていた。
昨日は不気味だと感じた液体の循環する音が、今日は心地の良い命の鼓動に聞こえる。
ブルマはその音を聞きながら、最近のべジータのことを考えていた。


(どうしてこのサイヤ人の王子様は、自分を追い詰めるのかしら)
(超サイヤ人になれなくて焦っているのはわかるけど・・・
死んじゃったら超サイヤ人もあったもんじゃないのにね)
何故、べジータは孫悟空に勝てないのだろう。
はじめて地球に来た時は、圧倒的な強さを見せ、孫悟空など敵ではなかったのに。


ブルマはその問いに、漠然とだが答えを見つけた。

孫悟空にあって、べジータにないもの。

いや、少し表現が違うかもしれない。
(孫くんは自分より強い奴との戦いを楽しむことが目的で・・・
べジータはサイヤ人の誇りのために、自分のプライドのために戦っている・・・。)

もちろん背負っているものの重みも違うが、それは2人のサイヤ人にとって、きっとたいしたことではないだろう。
(孫君は戦うことが楽しくてしょうがないんだわ・・・
べジータはきっと違う。
常に勝つためだけに戦っているようだもの。だからこんなに焦ってる・・・)

(多分そういうこと・・・だと思うわ)

ブルマは一人納得すると、張り詰めていた神経がプッツリと切れたようになり強い眠気に襲われた。
そして、次第にブルマの意識は眠りの中へと落ちていった。

------------------------------------------------------

ガコン。ゴボゴボゴボ・・・
メディカルマシーンが音を立てて排水を開始した。

意識を取り戻したべジータは、呼吸器をふりはずすと、マシーンのヘリに足をかけ外へ出た。
あたりを見回したが、そこは見覚えのない場所だった。
ふと、マシーンの裏側にある小さな机に、うつ伏せになってうたた寝しているブルマの姿を見つけた。

(ここはC.Cのどこかの部屋の中か)
べジータは重力室で起きたことを思い出そうとしたが、強い衝撃を受けた後のことは判らなかった。


べジータは寝ているブルマに近づき「おい」と声をかけた、が、目が覚める様子はない。
軽く舌打ちをし、部屋を出て行きかけたが、べジータは入り口のところまで来て一旦足を止め、寝ているブルマの側にスタスタと戻ってきた。

べジータは無表情にブルマを見下ろしていたが、スッと手を伸ばしブルマの髪を手の甲で軽く触れた。

さらさらとして、ひんやりとした感触がべジータの手の甲に伝わる。
べジータは額から耳にかけて、手の甲を2、3度上下に動かしていたが、寝ているブルマが少し頭を動かしたので、べジータはそれっきりブルマの髪から手を離し、今度はメディカルマシーンに目をやった。

(いい出来だ)
べジータは素直にそう思った。
もちろん、フリーザのところで使用していた新型の性能には及ばないだろうが、ブルマはメディカルマシーンそのものを見たことがない。
べジータの話を聞いただけでここまで作り上げたのは、やはりブルマの云うように天才科学者なのだろう。
(この女、くだらんことばかり喋るくせに、肝心なことは云わん)
べジータはメディカルマシーンの開発をしていることすら聞いていなかった。
ブルマにしてみれば、ここのところ、トレーニングのこと以外は完全にシャットアウトしているべジータに、話したくても話せなかったのだが。

(しかし。・・・悪くない、この女・・・)
べジータは頭のいい人間や、必死に努力する人間が嫌いではない。
逆に云うと、口先だけの奴や、強い者に媚びへつらうだけしか脳のない奴をみると殺したくなる。
(もちろん今まではそうしてきたが)

とにかく。
べジータはこの際、この女の下品さには目をつぶって、自分のために利用してやってもいいと思いはじめていた。
それは女自身も望んでいたことで、むしろ積極的に自分にちょっかい(?)をだしてくるブルマを避けていたのはべジータの方である。 それに、おとなしくしていれば十分に美しい女で、べジータの欲求を満たすだけなら問題はなさそうだった。

べジータがまず第一に考えることは戦闘の事であり、ほとんどの興味をそこに持っていかれるだけで、女が嫌いというわけではない。
べジータの高いハードルを越える女は存在しなかっただけだ。

といっても、ブルマに対して少々興味は持っただけで、情を感じ始めたわけではない。

(とことん利用してやるさ、貴様がオレに感謝したくなるほどな)

べジータの口元に冷たい笑みが浮かんだ。

NEXT
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送