未来から来た青年 1

3年後に世界を恐怖のどん底におとしめる人造人間が現れる。

不思議な青年がやってきたすぐ後、べジータは大量の食料をカプセルに詰め込み出て行ってしまった。
ヤムチャは、ブルマとのしばらくの別れを惜しんでいたが、明日の朝修行の旅へ出るという。
ブルマは明日旅立つ恋人との楽しい時間を過ごすために、西の都の素敵なホテルを予約していた。
最上階はVIPのみが入れ、地下にはカジノもあり、そのホテルをブルマは結構気に入っていた。

今日はどんな服を着ていこうかしら。
普段はツナギかショートパンツといったカジュアル路線のブルマだが、ここぞという勝負時は頭のてっぺんからつま先まで惜しみなく金をかけ、気を配ることにしている。
ブルマが選んだのは上品なレッド系のドレスで、上はビスチェタイプになっており、下は歩くたびに優雅に太ももあたりがチラチラと見えるようカットされている。

ブルマだけにの為に作られたオートクチュールだ。
有名ブランドのデザイナーが、ブルマをイメージしてドレスを作りたいといい、採寸やら仮縫いやらで3〜4回ほど煩わされたものだ。

これがいいわね。
ブルマは専属の美容師やらエステシャンに身支度をさせると、最後にそのドレスを纏った。
鏡に映った自分は、ハッとするほど華やかで美しく、一人の男に満足してしまうのは罪なんじゃないだろうかと思わせた。

その夜は完璧だった。
夕食はおいしく、上等のワインを2本ほどあけた。
酔いを醒ますため、少しカジノで遊んでから、いつものように最上階のスイートルームでヤムチャと熱いひと時を過ごすはず・・・だった。

いつもはハイローラー専用のフロアで遊ぶブルマ達だったが、今日に限って一般のフロアで、ルーレットに興じていた。
そして、ヤムチャが黒髪の女性に声をかけられた。
ヤムチャがモテるのは承知の上だし、そんな男の恋人というのはブルマとしても鼻が高いのでその女性をチラと見ただけでまたゲームを再開した。
が、どうやらその女性はヤムチャと顔見知りらしく、ブルマの横で長々と世間話しを始めた。
まあ、場所が場所だし、いくらブルマだってそんなことでは目くじらをたてるわけもなく・・・
「ヤムチャさん、私もご一緒させてくれる?」
「え?あ、ああ。いや、ちょっと今日はツレがいるんで、また今度ね」
ヤムチャはチラとブルマを見たが、ブルマはヤムチャを気にするふうでもなく、クルクルと回る数字の盤を見ているだけだった。

ヤムチャはその女性にはなんの感情ももっていなかったが、不意に後ろめたい気持ちになった。
ブルマが何も言わないので不機嫌になったと思い、フォローをするように会話をし始めた。
「なあ、ブルマ。あの子はオレのバイト先の子で、最近付き合っていた店長と別れたらしくてさ・・・」
わざとらしい明るい声に、ブルマは次第にイライラしてきた。
どうでもいいじゃないの、そんなこと。
それに、なんでいちいち言い訳がましいことを言うわけ?
あたしはなんとも思ってなかったのに、それじゃ、なんかやましいことがあったように聞こえるわよ。
言ってやりたい言葉はたくさんあったが、ブルマはそれをグッと飲み込んだ。
ヤムチャに言い訳をさせる何かを、ブルマ自身が作り出していることもわかっている。

ヤムチャの浮気がいつもの喧嘩の原因だと喚いていても、実際には、積極的な女性の誘いにヤムチャが断りきれず、相談に乗ったり、デートに行くはめになっているだけなのは、長年の付き合いなのでわかっている。
そして、その人の良さはブルマも好ましく思っている。

それでも・・・
ブルマの気持ちとしては、自分以外の女性には、自分と同じようにやさしくしないでほしいのだ。
しっかりNOと言って断ってほしい。

なんだか楽しい気分がしぼんでしまったようだ。
「ヤムチャごめん、今日は帰るわ。用事があったのを思い出したの」
「え?!そんな」
「ホントごめんね。これ、ルームキー。ゆっくりしていってね」
ブルマはそう言うと席を立ち上がり、残っていたチップを全てディーラーに渡した。
「勝たせてくれてありがとう、これは取っておいて」
50,000万ゼニーの黒いチップが3山程度だったが、ディーラーはお礼を言うと、チップ専用のボックスに移動させた。

「まてよ、ブルマ!」
ヤムチャは不満そうにブルマの腕をつかんだが、さっと振り払われた。
ヤムチャにとってブルマの力などたいしたことはないのだが、ひどく心を傷付けられ、それ以上ブルマを追うことはなかった。

あたしのバカ。なに意地張ってるのかしら。

オレは弱虫のバカヤローだな。これ以上自分が傷つくのが怖くてブルマを追いかけることができないんだ。

好きあってるのに、すれ違う心を、2人はどうにもできなかった。
そして、ブルマはこの先に別れがあることを、ぼんやり予感していた。

あとがき
ヤムチャから気持ちが離れつつある時期のブルマさんです。
ヤムチャ→べジータの間に未来トランクスを入れてみました(><)

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