蒼い狂気 6

ブルマが未来に来て、早くも6日目が終わろうとしていた。
あれからずっと、二人は中の都に滞在していた。
西の都に戻っても良かったのだが、こちらのブルマも忙しく、C.Cには戻っていなかったので、その移動時間を惜しんで復旧作業に取り組んでいた。

「あなたのおかげで随分と作業がはかどりました」
ブルマが来てから、作業スピードが格段に速くなり今日にも目処がつきそうだった。
「役に立ててよかったわ」
「・・・明日、帰るんですね・・・」
「・・・そうね。でも私がいなくても、こっちのブルマがいれば大丈夫よ。なんてったって、天才だからね!」
ブルマは明るく言ったが、それがかえって空々しく思え、表情を沈ませた。

「そんな顔をしないでください。オレはもう、ここに残ってくれとはいいませんから・・・。あなたを困らせるなんて、最低な男ですね、すみません・・・」
トランクスは卑屈ではなく、素直な気持ちでブルマに伝えた。
「トランクス!あたしあんたの事好きよ。でなきゃあんなことしないわよ。あたしは未来のトランクスの恋人になりたいと思ったわ。ほんとよ」
「・・・その言葉だけで、オレは十分です。過去のあなたはやっぱり・・・父さんの大切な人です。ここでオレと、その・・・いろいろあったことは・・・忘れてください。オレだけが覚えていればいいんです」
トランクスはブルマを傷つけないように言葉を一つ一つ選んでいた。

(でもね、トランクス。あたしの身体はあんたを忘れないわ、きっと)

沈黙を破るように、トランクスはブルマを抱き寄せ、唇を重ね合わせた。
おそらく、最後のキスになるだろう。
こみ上げてくる切なさを打ち消すように、何度も何度もお互いの唇を求めた。

こんな情熱的なキスは、多分もうすることはない。
トランクスはいつまでもぐずぐずとしていたい気持ちを断ち切り、ブルマの肩をそっと自分から引き離した。
「帰りましょう。母さんが待っています」

二人は一週間ぶりにC.Cに戻り、3人でとる最後の夕食の後、コーヒーを飲みながらくつろいでいた。
「ブルマさんが来てくれたおかげで中の都の方は随分とはかどりましたよ」
「そう、助かったわブルマ。ありがとう」
「どういたしまして。ねぇ、ブルマ・・・」
「なに?」
「本当にべジータに逢わなくてもいいの?あたしが帰ってから、あのタイムマシンを破壊しちゃってもいいの?」
「・・・いいのよ。あんたの世界のべジータは、今のあたしを知らないじゃない。べジータが死んじゃってから一人で生きてきたあたしを知らないわ。そんなべジータに逢ったってさ・・・」
「でもべジータは、べジータよ」
そう言ってブルマはハッとした。本当にそうだろうか?同じ人間であっても生きてきた時代が違えば、もうその人と同じではない。素材が同じというだけで、なにもかもが違うんじゃないだろうか。
小さなトランクスと未来のトランクスだってそうだ。ブルマにとって自分の子供というのは小さなトランクスであって、未来のトランクスではない。
だから異性として好きになった・・・。
べジータのことだって同じだ。
未来のブルマにとって、過去に生きているべジータに逢っても時間を共有できないのだろう。
逆に心から愛していたべジータだからこそ、逢いたくないのかもしれない。
「ブルマ、過去に戻ったらタイムマシンは壊すのよ。約束して」
未来のブルマはきっぱりと言った。

別れの朝

「過去のブルマ、元気でね。べジータと仲良くやんなさいよ」
ブルマは未来のブルマと硬く握手をし、そしてトランクスに向かってうなづくと、トランクスに抱きかかえられ、タイムマシンに乗り込んだ。
「ありがとう、元気でね。そっちのブルマを大切にしてあげてよ」
「わかっています。あなたも、どうか・・・お元気で・・・」
トランクスはブルマの蒼い瞳を除きこむようにじっと見つめた。ブルマもそれに答える。
たった一週間たらずだったが、一生分の時間を共に過ごした。別れを思うと涙が出そうになる。
ブルマは目で、もう行きなさいと合図をすると、シールド施錠スイッチを押した。

ゆっくりとシールドが降りてくる。

トランクスはタイムマシンから名残惜しそうに離れた。視線はブルマから逸らさない。
シールドガラスが二人を阻んでも、視線は強く絡みあい、たくさんの言葉を交わしているようだった。

シールドが完全にしまった。
トランクスはシールドガラスに両手を置いて、ブルマの名前を呼んだ。

シールドの内側で、ブルマの唇の形が小さく言葉をなぞる。

「さようなら」と。


トランクスが離れると、タイムマシンは急上昇し、やがて消えた。

後に残される方がきっとつらい・・・トランクスはそう思った。
そして、自分の母親がそうだったことに気づいた。
(そうだ、母さんはかつての仲間と、最愛の人からたった一人この世界に残された)
こんな地獄の世界に一人。
そして、地獄を終焉させ、希望の光を導きだした。

(ブルマさん、あなた達は・・・本当に・・・すごい人だ。オレの母さんも、オレの好きになった人も・・・)

トランクスはタイムマシンが消えた空をいつまでも、いつまでも見つめていた。





あとがき
トランクスに切ない想いをさせたいがために書いたものが、こんなに長くなってしまいました。
一応二人は親子ですからねー。
こんなことさせてヤバイかなとは思ったんですが、時代が違うということでアリにしました(><)
そうです、未来トランクスとブルマなら体関係もオッケーということで、お許しください。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。


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