紺碧の残像

第二話



「ねぇ、トランクス。あんた一体なんの研究してるの?」
ブルマは足を組み、ソファに座るとトランクスをチラリと横目で見た。
「いえ、オレは科学者ではありませんから・・・」
「え?」
「それにオレは訳あってここへ来たのです。理由は言えませんが・・・」
「ふーん。よくわからないけどさ、父さんに用があるって訳じゃなかったのね」
「・・・すみません・・・なかなか言い出せなくて」
「あたしが早とちりしたわけだし、あやまることなんかないわよ。
それにさあ。
あんたちょっと素敵だからー、もうちょっとあたしに付き合いなさいよ」
ブルマはそう云うと、トランクスの腕に自分の頬を、すりすりと擦り付けた。
「・・・あら?!」
一瞬ブルマの動きが止まったかと思うと、
トランクスの着ていたジャケットを乱暴に脱がし始めた。
「な、なにをするんですか!!!」
トランクスはブルマのあまりにも積極的な行動に、体温が一気に上昇し、
あわてて飛びのいた。
「やっぱり思ったとおりだわ!トランクス、あんた武道やってるでしょー。
しかも相当の使い手ね!
・・・もしかしたら、ヤムチャやクリリン君と同じくらい強いかもしれないわ。
ま、孫君にはかなわないでしょうけど・・・
次回の天下一武道会に出てみたら?
あんたカッコいいから女の子にモテるわよー、きっと」

「はは・・・」
トランクスは少しがっかりとして、力なく笑った。


ブルマに引っ張られたために、中途半端に体に絡みついたジャケットを
トランクスはふぅーと深く息を吐きながら脱いだ。

むき出された肩や腕は、細身ではあるが鍛え上げられた筋肉が美しく削りだされ、
少年ぽさが抜けたばかりのような頬のラインは、顎までシャープに切り出されていて、
首筋にかけて濃い影をつくっていた。

(ヤムチャとは違うタイプだけど、あたし好みのいい男だわー)
ブルマはトランクスの一連の動作を、冷静に目で追いながらそう思った。

トランクスは先ほどから、ブルマが自分を興味深く見ていることに気づいた。
そして、自分に好意を抱いているんではないかという、淡い期待を持ったが、
その期待は見事に裏切られることになった。

「孫君がさ、結構いい男に成長しててさー。しくじったな・・・
あーんなチビな孫君が、あんなにカッコ良くなるなんて思わなかったし」
「ヤムチャとは喧嘩ばっかりだしさ・・・」
ブルマのいい男好きは昔からだったらしい。
自分を見て、しきりにいい男だと云っているのが、半分は癖のようなものらしいことが判ると
トランクスはがっくりと肩を落とした。

「なに?どうしたの?」
「いえ・・・何でもありません。あなたは悟空さんが、その・・・好きだったのですか?」
「え?孫君?まさか。そんなんじゃないわよ!・・・確かにカッコよくなったけどさ、弟みたいなもんよ」
いつも強気のブルマだったが、今日ばかりは不安定な気が、ブルマの細い肩を覆っている。
トランクスはいたたまれなくなり、ブルマの肩を自分に引き寄せた。

「あなたは寂しいのですね」
「!!!」

ブルマは自分の心の中をトランクスに見透かされたことを否定するように、トランクスの腕を乱暴に払いのけた。
もちろんトランクスが自分から腕を緩めたため、ブルマに払いのけられることができたのだが、ブルマはそんなことを知る由もない。
勝気な女は、気を許した相手以外に自分の心を覗かれることを嫌う。
トランクスがいくら自分好みのいい男だったとはいえ、
今の言葉は言っていいものではなかった。
「もう帰っていいわよ、トランクス」
ブルマは冷たく言い放つと、ソファから立ち上がり、出入り口へ向かったが、
ドアまではたどり着くことはできなかった。

トランクスの硬く引き締まった腕が、ブルマの細い肩を後ろから捕えていたからだ。
「・・・何よ、離しなさいよ」
ブルマは先ほどのように、トランクスから逃れようとしたが、今度はびくともしなかった。
「何故ですか」
「何故?!何言ってんのよアンタ!!自分がなにやってるか判ってるの!!!」
「もちろんです」
「じゃあ、離しなさいよ!!」
「ヤムチャさんという恋人がいるのに、あなたは寂しいと感じている・・・
オレなら、あなたにそんな想いをさせない」
トランクスはブルマを抱く腕に力を込めた。
「やめなさいよ・・・苦しいじゃないの!」
もがけばもがくほど、トランクスの腕がくい込んで、ブルマの身体を締め付ける。
呼吸をするのが苦しくなり、次第に頭の中がぼうっとしてきた。
「・・・トランクス・・・やめて」
「あなたの心が満たされていないのなら
オレはもう、誰にも遠慮などしない」
トランクスはブルマの耳元に唇を近づけ、低い声で静かに、しかしはっきりと言い切った。
「遠・・・慮?」
しかしトランクスの返事はなく、かわりに熱を帯びた唇が、
ブルマの耳から首筋まで柔らかく押し当てられた。
「きゃっ」
ブルマはあまりのくすぐったさに、小さな悲鳴をあげたが、トランクスは愛しそうにブルマの髪の中に指を通し、白いうなじに沿って唇を這わせた。
くすぐったさと、気持ちよさが交互に押し寄せる感覚にブルマは戸惑った。

「じきに気持ちよくなりますから」
トランクスは律儀に言う。

ブルマは少し笑いたくなってしまった。
まるで映画のワンシーンのような甘い行動は平気でするくせに、
激情に押し流されるようにはコトを進めようとはしない。

(アンバランスな男ね)
ブルマは余裕を取り戻し、この男がどのように自分を手に入れようとするのかを、楽しむ気持ちが生まれてきた。
そして、電源の入っていないテレビモニターに映りこむ自分達の姿・・・
・・・特に、トランクスの表情を覗き見た。

トランクスはブルマがモニター越しに自分を見ていることに気づいた。
表情までは良く見えないが、自分よりも若いブルマに、冷静に見られていることはあまりいい気分ではなかった。
(・・・あなたの思うように、オレは動きませんよ)

トランクスは両腕の力をわずかに緩めると、ブルマのぱっちりと開いた両目を片手で覆った。
「あ!」
「悪趣味ですね、あなたは。
そんなにオレの顔が見たいですか」
(知ってたのね。この男、以外に鋭い)
ブルマはこのテの男が嫌いではなかった。

トランクスの手は、その唇の温度ほどには熱くはなかった。
むしろヒヤリとした感触が、瞼に心地よい。
自分の背中にあたる、男のがっしりとした胸板もブルマには新鮮なものだと思った。

ヤムチャは決して後ろからは抱きしめたりはしない。
まず、ブルマの目を見て、キスをして、それから・・・
ブルマはいつものヤムチャとの行為をなぞるように、思い出していた。
しかし、その思考は中断された。

トランクスの舌が、ブルマの耳をすーっとなぞったからだ。
そして甘く噛まれながら、両目を押さえた反対の腕が
ブルマの青いワンピースのボタンを、一つ一つ外していった。

気がつくとトランクスの手がブルマの胸に触れていて、
少し戸惑うように柔らかく撫でまわし、中心部の突起にたどり着くと、
指先を使い、器用に先端を弄りまわした。

「あぁ・・・」
ブルマの脳から身体の芯まで、一直線に熱いしずくが落ちていく。

トランクスの柔らかい髪が、ブルマの肩にさらさらと触れた。
首の付け根に、トランクスの舌がゆっくりと這っていく。
「んん・・・」 その度にブルマの身体は意思とは関係なく喜び悶え、男を受け入れる準備を始める。

ブルマの呼吸の感覚がしだいに短くなり、膝がガクガクとして自分の体重を支えることがつらい。
「トランクス、手を・・・離して・・・」
ブルマは両目をふさいでいる、トランクスの手にそっと自分の手を重ねた。
トランクスは意外にもすんなりと手を解いた。
途端
ブルマの向きをくるりと変え、そのままソファに押し付けるように、荒っぽくブルマを座らせた。
「きゃ!」
驚いたブルマは思わず短く悲鳴をあげた。
トランクスはブルマに覆いかぶさるように、両手をソファのヘリにかけ、
肩膝をソファの上に乗せた。
ブルマは怖いくらいに真剣なトランクスの視線から逃れることができずに、
凍りついたように身体をこわばらせた。

やっとのことで口を開く。
「あたしをどうするつもり?ひどいことをするとヤムチャがあんたを許さないわよ」
「この時代なら、オレより強い奴なんていないんですよ。
あの悟空さんも含めてね・・・」
トランクスは淡々と言った。

「言ったでしょう?オレは誰にも遠慮をしないって」
「あんたの言っていることは、さっぱり判らないわ!!」

「判りますよ、今に・・・」

トランクスはブルマの長く蒼い髪を一筋すくいとり、匂いを嗅ぐようなしぐさをした。
そしてチラッと赤い舌を出し、そのままブルマの下唇をぺろりと舐めた。


続く


あとがき
「寂しそうな母をみてつい・・・」
微妙。

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