世界で一番ママが好き ラウンド2

最終話

亀仙人の修行を無事終えたトランクスと悟天は、いつもの遊び場に来ていた。

「トランクス君、今日はもう遅いからおうちに帰ろうよ。お母さんに叱られちゃうよ」
「そうだな・・・悟天、今日はうちに泊まっていけよ」
「でもぉ・・・」
「オレがチチさんに電話をかけてやるからさ」
「それならいいよ」
「よし、じゃ決定だ!パパに見つからないようにオレの部屋の窓からそーっと入ろう」
「なんか悪いことするみたいだね」
「ま、似たようなものかもな」
トランクスは右手に着けていた変身装置のボタンを押すと、みるみるうちにトランクスは大きくなり、青年の姿になった。
「どうだ、悟天。すごいだろ」
「うん!この前の神龍にお願いした時と同じ大人のトランクス君だ」
「この姿でママと仲良くなれば、完璧さ」
「そ、そうなの?」
「パパにバレなければな・・・悟天は見張り役だよ」
「えー!!ボクがべジータおじさんを見張ってるの?やだよー、怖いもん」
「ちぇ、弱虫だな、悟天は」
「弱虫じゃないよー!!」
「じゃ、見張ってろよ」
「わかったよ・・・」

トランクスと悟天はC.Cに戻ると、トランクスの部屋の窓からこっそり入った。
「パパは重力室でトレーニングしてるから、悟天はパパが出てきたら一瞬だけ気をあげてくれ」
「うん。トランクス君はどうするの?」
「オレはママの部屋に行く。亀仙人様に大人の修行をしてもらったからな!ばっちりさ」
「頑張ってね」
トランクスと悟天は気を消しながら、それぞれ作戦を開始するべく移動を始めた。

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「母さん」
トランクスはブルマの部屋の窓をコツンコツンと叩いた。
ブルマはへそが見えるくらいの短いタンクトップにショートパンツ姿で、エアバイクの改造に取り組んでいたが、窓の外にいるトランクスの姿を見つけると嬉しそうに駆け寄った。
「あらー!大きいトランクスじゃない!」
ブルマは大きく窓を開け、トランクスを中に招き入れた。
「すみません、突然」
「何言ってるの、よく来たわねー。ま、そこに座りなさいよ、ビールでも飲む?」
ブルマは備え付けのミニ冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し、1本をトランクスに差し出した。
(ビールか・・・オレ飲んだことないんだよな)
トランクスはためらったが、怪しまれるといけないので、一口ほど口に含んだ。
(うわ、苦・・・)
トランクスはあまりのまずさに思いっきり眉をひそめた。
「なによ、あんたビール嫌いだったっけ?」
「え?いえ・・・す、スキです(多分)」
トランクスはビールの苦味がわからないように一気に飲み干した。
「あんた・・・いくら好きだからってそんな飲み方するもんじゃないわよ」
ブルマはあきれてトランクスを見た。
「す、すいません」
トランクスはだんだんと体が火照ってくるのがわかった。
(くそー。なんだよ、あっつくなってきたじゃないか)
「ほら、馬鹿ね。顔真っ赤じゃない」
ブルマはトランクスの頬を両手で挟んだ。ブルマの顔が随分と近い。
(ドキッ。ママ、顔が近いって!)
トランクスの体の温度がまた上がった。
「あんた汗かいてるじゃないの」
ブルマはそういうと、濡れタオルでトランクスの額を拭いてやっていたが、ふと動きを止めてじーっとトランクスの顔を覗き込んだ。
「ホント、あんたっていい男に成長したわよねー。目つきもべジータほど悪くはないみたいだしさ」
「はあ・・・」
トランクスはどう答えていいのか困ったので、適当に相打ちを打った。
「もう一本飲む?ビールしかないけどさ」
ブルマはそう云いながら立ち上がろうとした。

その時、ブルマの形の良い大きな胸をトランクスは一指し指でつんつんと突付いた。
「きゃ!・・・トランクス!?」
ブルマは頬を赤くそめ、びっくりしたようにトランクスを見た。
(ママ、喜んでくれたかな)
「・・・あんた酔っ払ってるんじゃないの?」
トランクスの視点の定まらない目と、真っ赤になった頬をしていた。
ブルマはトランクスの横に座りなおし、ばかねー・・・と云いながらトランクスの癖のない髪をさらさらと撫でた。
(よーし、いい感じだ!多分)
トランクスは亀仙人伝授のぱふぱふを、このまま試みることにした。
「母さ・・・!!」
トランクスがブルマの胸に顔を埋めようとしたとき、何かにぐっと襟を引っ張られ引き戻された。

「いい度胸だ、トランクス」
(げっ!この声はパパ・・・)
トランクスが恐る恐る後ろを振り返ると、普段よりも恐ろしい顔をしたべジータが睨みをきかせている。
「と、父さん」
「よう、久しぶりだな」
べジータは口元だけ歪ませてニヤッと笑った。
(悟天のバカ!!合図しろって云ったのに)
「こんなところでコソコソと何をしている?」
「いえ、別に、ボク、いやオレは何も・・・」
「ほう、貴様がブルマに何もしていない、とでもいうのか?」
べジータは普段には見せない表情で、トランクスを睨みつけた。
「どうしたの、べジータ?せっかくトランクスが来てくれたのにさぁ」
「フン、何も知らない奴はお気楽なもんだな」
「何言ってるのか、さっぱりわからないわよ」
「・・・そ、それじゃオレ、も、もう帰ります」
トランクスはコソコソと出入り口に向かったが、べジータに腕をとられた。
「まあそんなに焦るな、貴様との話はまだ終わってないからな・・・」
べジータの表情が残虐そうに歪んだ。
「ふーん、べジータが珍しいこというわね。じゃ、男同士で話でもしたら?あたしはリビングに行ってるからさ」
ブルマはトランクスの気持ちもお構い無しに、スタスタと部屋を出て行ってしまった。
(ママッ・・・行かないでっ)
「だ、そうだ」
「・・・」
「貴様、ブルマに何をしようとした?」
「べ、別に・・・何も」
「ほう。・・・あんまりオレを怒らせるなよ。貴様がブルマをどう見てるかぐらい、オレにでもわかるぜ」
(パパ、鋭い・・・)
トランクスは、さっきまでの赤い顔を一気に青く変化させた。
「もっとも・・・ブルマは貴様の気持ちなど、気づいてはいないようだがな。・・・残念だったな」
「父さん、それは・・・」
「違うとでもいうのか。貴様がブルマに逢いにちょくちょく未来から来てるのは知ってるぞ」
それには前回の神龍にたのんで、一日だけ大人にしてもらったときのことも含まれているようだ。
(ううー。パパにはフュージョンしないと勝てないからなー)
「未来の世界はどうだ。平和ボケして体もなまっているだろう?オレが組み手の相手でもしてやろうか?なあ、トランクス・・・。オレたちは戦闘民族だからな」
「え、遠慮しておきます・・・」
「なあに、遠慮することはないさ。貴様とオレは親子というやつらしいからな。オレはこの地球に来て親子の情というものを教わった・・・なんでも時には厳しく、というのも親の愛情らしいな」
べジータは冷や汗たらたらのトランクスの顔を覗き込み、くっくっくと喉の奥で笑った。
(か、かわいそうな未来のオレ!)

トランクスは当初の予定とは全く違った展開に、この場を逃げ出すことを考えはじめていた。
が、次第に、頭の中がボーっとしてきて、うまく考えがまとまらないどころか、だんだんと楽しい気分になってきた。
アルコールが効いてきたきたせいだが、経験のないトランクスには判らない。

「親子の愛はいいですけど、父さんは母さんのことををちゃんと愛しているんですか・・・?」
トランクスはだんだんと気が大きくなり始めていた。
「なに?」
べジータは突然の息子の反撃に一瞬たじろいだ。
(やった、パパはやっぱりこの手の会話には弱いんだ!)
「オレは母さんが大好きです。父さんがいなかったら・・・いえ、父さんから母さんを奪い取るつもりでいます」
トランクスは普段から悟天に云っていたことを、思い切ってべジータに云ってみた。
べジータの反応が怖くて云えないことだったが、今日は何故か云える。
(すごいぞ、オレ!パパなんか怖くなくなってきたぜーー)
「・・・」
べジータはトランクスの変化に困惑しているようだった。トランクスに先ほどまでの怯えはない。
べジータの視線に缶ビールの空き缶が目に入った。
ブルマが軟弱なヤムチャとかいう男と喧嘩した後によく飲んでいたものだ。
べジータもこの飲み物のせいで、散々被害をこうむっていた。
重力室の修理がほっとかれるだけならガマンもできたが、自分に絡んでくるブルマにはどう対処してよいのかわからなかった。
大抵はべジータのキライな下品な格好のまま、抱きついてきたり、突然怒鳴られたり、ときにはヤムチャに間違われたのか、他の女がどうのこうのと理解不可能な言葉でまくし立てることもあった。
べジータは相手にはしなかったが、毎日続くとさすがにうんざりとしたものだ。

その飲み物をトランクスは飲んだのだろう。
「チ」
べジータは軽く舌打ちをした。
「貴様、そのビールとかいうものを飲んだだろ?」
(ビール?ああ、この苦い飲み物のことかー。それがどうしたっていうんだろ)
「貴様とのトレーニングは明日にしてやる、だからさっさと寝ろ!」
「え?なんで・・・いや、何故ですか」
「その飲み物は正常な判断力を奪うからな、そんな時に貴様を痛めつけてもつまらん・・・」
(痛めつけるって、パパ・・・)
べジータはトランクスをブルマの部屋から追い出した。

(ふぁー、なんだか眠くなってきたな)
トランクスは字自分の部屋までフラフラと歩いていったが、その頃にはほとんど記憶がなくなっていた。
「トランクス君ー。上手くやってるのかなぁー。ボクいつまでここにいればいいんだろう。べジータさんもいつまでトレーニングしてるんだろうなー」
べジータの見張りを頼まれた悟天は、誰もいなくなった重力室の近くの廊下にいつまでも突っ立っていた。

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「あら?大きいトランクスはどうしたのよ、べジータ」
「・・・あいつにビールを飲ませたな」
「一本だけね。それがどうかしたの?」
「あのヤローは、貴様を母親だとは思っていないぞ」
「なに?どういう意味?」
「意味など自分で考えろ。とにかくあいつがこっちにいる間は、貴様はオレの部屋にいてもらう」
「えー?あんたの部屋なんにもないからイヤよ。つまんないじゃない!」
「貴様、どうなっても知らんぞ」
「どうなってもって、何よ?はっきり云いなさいよ」
「・・・」
「なに?」
「つまりだ・・・」
べジータはブルマに覆いかぶさり、タンクトップの中へ手を入れ、2、3度胸を揉み上げた。
ブルマは短い悲鳴を上げたが、べジータはかまわず硬くとがった部分を口に含んだ。
「トランクスにこういうことをされてもいいのかと云っている」
「あら、あの素敵になったトランクスなら、ウェルカムよ!!未来から来たなら問題ないじゃない♪年だってそう変わらないしさ。こーんな可愛い母親なら、手を出したくなるのも当然よね!」
ブルマは嬉しそうにはしゃぎ出した。
「なに?!」
べジータは焦ったような表情を見せた。
「う、そ、よー、あんたもそんなカオするのねー。かわいー」
ブルマはべジータの首に手を回し、頬にちゅっとキスをした。
「貴様・・・!!」
完全に遊ばれた形になったべジータは、ブルマへの反撃を開始した。
今夜は朝方まで眠ることはできないだろう・・・

その頃トランクスは、ぐーすかと自分のベッドで眠りこけていた。
自分がきっかけで、ますます、ラブラブ度を上げてしまった二人のことなどは知る由もなく。

トランクスの、大人への道はまだまだ遠い。





あとがき
長い。
肝心な部分にたどりつくまでに息切れしちゃいました。
配分をちゃんと考えないと・・・

やっぱり、このシリーズはトランクスの喋り口調でストーリー展開したほうが、進めやすかったです。
もし次回があるなら、そうしよっと。

ここまでお読みくださりありがとうございました!!

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