未来への力-
第二話 夢の中
ブルマはC.Cに戻ると、急いで男から受け取ったカプセルを開けた。
そこから出てきたのは・・・
人造人間に関する資料のようなものだった。
日付は今日のものだ。
おそらく、会議で使われるものだったのだろう。
ブルマはざっと目を通す。
そして、愕然とした。
「なによ・・・これ・・・」
そこに書かれていることは、まるで信じられないようなことばかりだった。
それは、生身の人間を元にして作られた、殺人マシーンだという事。
そのパワーは永久で果てることがない事。
人造人間の体内には爆破装置が埋め込まれていて、その装置はドクターゲロだけが作動させることができ、人造人間を破壊することができるという事。
そして、ドクターゲロは、自分の作り出した人造人間の手によってすでに殺されていた事
等々・・・
人造人間に埋め込まれている爆破装置を、遠隔操作するためのリモートコントロールを開発させるプロジェクトだったようだ。
資料の最後には、世界のトップクラスの科学者達が名を連ねた紙が添付されていた。
そして、その筆頭にはブルマの父親、ブリーフ博士の名が記してあった。
人造人間のことは、トップシークレットだったらしい。
いまだにニュースでは、相手が人造人間だということは伏せられ、
ただの気違いな男女がやっていることだと思われている。
とんでもないことだった。
世の中が物騒になった、などという軽いものではない。
このままでは人類が・・・いや、地球すらも破壊されてしまうかもしれない。
「ベジータがあぶないわ!!!」
ブルマはベジータから離れたことを後悔した。
いくらサイヤ人でも、パワーは無限ではない。
戦闘が長引けば不利になる。
ブルマは胸が痛むのを必死でこらえ、真っ暗な自分の部屋で、じっとベジータの帰りを待った。
ガタン。
物音がしたのは、午前もまわったころだった。
ブルマは振り返る。
そこに立っていたのは・・・・
「ベジータ・・・」
ブルマはベジータに駆け寄り、抱きついた。
ヌルリ。
ブルマの手に、べっとりとしたものが、からみついた。
「!!!!」
全身血まみれになったベジータは、ブルマの体にもたれかかるように倒れこみ、気を失った。
「ベジータ!!!!!!」
ブルマは、それからの自分の行動を覚えてはいなかった。
気づいたら、病院のベッドに横たわるベジータをじっと見つめていたのだ。
普通の人間なら死んでいた。
しかし、サイヤ人の血がベジータを救った。
まだベジータは目を覚まさないが、こうしている間にも驚異的な回復力で、自分の体を治癒しているのだろう。
戻ってきてくれてよかった・・・
「べジータのバカ・・・」
ブルマはベジータの頬にやさしく触れた。
「・・・貴様がな、ブルマ」
ベジータはパチリと目を開けた。
「気がついたのね!!よかった!」
「フン。これくらいの怪我など・・・っ!」
ベジータは起きあがろうとしたが、痛みで顔をしかめた。
「ダメよ!!まだ寝てないと!!」
ブルマは慌てて押さえつけようとするが、ベジータはその手を払った。
そしてベッドから上半身だけを起こし、ブルマに視線をやった。
「聞け、ブルマ」
ベジータの表情は堅くこわばっていた。
「ピッコロが死んだ・・・」
「え・・・・・」
「つまり、ドラゴンボールも消えた・・・ということだ」
「!!!」
「・・・もう、父さんは生き返らないってこと・・・なのね。
父さんと一緒だったから、母さんも・・・」
ベジータは黙ったままブルマを見ている。
ブルマの双眸からボロボロと涙が流れ落ちた。
それと同時に、今まで張りつめていた緊張が解け、ブルマは病院の冷たい床にひざまづくように崩れ落ちた。
ブルマは声を押し殺して泣いた。
嗚咽だけが病院の室内に響く。
さっきまでは、なんとかなるんじゃないかと思っていた。
人造人間のことも・・・なにもかも。
両親が死んだことは悲しかったが、心のどこかで、ドラゴンボールに頼っていた。
(父さんは・・・人造人間たちが、科学者を憎んでいるのを知っていたから、
あたしをメンバーに加えなかったんだわ)
今更ながら、父親に守られていたことを知った。
でも・・・
もう、救いはない。
孫悟空はウイルス性の心臓病に倒れ、すでにこの世にはいない。
そしてピッコロも死んだ。
ベジータだって、生きて帰ってきたのが不思議なくらいだ。
不意に、17号に組み敷かれた時の、冷たい感触がブルマの体によみがえる。
怖い
怖い
助けて、
あたしを助けて!!
ブルマは心の中で叫び声をあげていた。
床に突っ伏したブルマの体を、ベジータがそっと抱え起こした。
べジータは動くたびに苦痛で顔を歪めたが、それでもブルマを抱え、ベッドの上に座らせると、自分もそこに横たわるように座った。
「ベジータ・・・」
ブルマは顔を上げた。
ベジータは相変わらず厳しい目をしていたが、ブルマの肩に手をやると、ゆっくりと抱き寄せた。
ベジータの体はボロボロだ。
それでもブルマの為に、痛みに耐えているようだった。
「泣くな」
ベジータの言葉に、ますます涙が止まらなくなった。
「うっ、うっ・・・」
ベジータはブルマを抱く腕に力を込めた。
「ベジータ、ひっく・・・痛いんでしょ?体・・・あたし大丈夫だから・・・」
「気にするな。たいしたことじゃない」
「・・・う、うわぁぁぁん!!!」
ブルマはベジータの胸で、堰を切ったように泣き出した。
泣いても泣いても、枯れることのない涙。
悲しみと、不安と、べジータを失うかもしれないという恐怖で、ブルマはただ泣くことしか出来なくなっていた。
「ブルマ」
ひっく、ひっく・・・
「・・・・・・」
べジータはブルマの顎を上に向かせ、ブルマの首筋に流れる涙を舐めた。
そして、ブルマのベアトップを降ろし、あらわになった胸を撫でた。
17号に乱暴に扱われた白い胸が、部分的に赤くなっている。
べジータはその部分を愛おしそうに舐め、そしてピンクに染まった先端を口に含み、軽く吸った。
「ひっく、・・・うう・・」
ブルマは相変わらず、泣くことをやめない。
べジータはブルマをベッドに横たわらせ、スカートの中に手を滑り込ませ、下着を剥ぎ取った。
ブルマはべジータの体温を身体に感じると、少し安心したように、泣きながら現実を受け入れ始めた。
「父さん・・・母さん・・・」
べジータの暖かい手が、ブルマの頬の涙をすくう。
そして流れ落ちた涙の跡をつたうように、べジータは胸のふくらみの中心へと舌を這わせた。
「うう・・・」
嗚咽とも、喘ぎ声ともとれない声が漏れる。
ブルマの頭の中は、絶望という言葉に縛られていたが、身体は別の次元をさまよい始めた。
次第にブルマの中も潤い、それを確認したべジータが、ブルマの膝を割りゆっくりと侵入する。
「うあぁ・・・ん」
ブルマは両手で顔を覆った。
べジータを身体に感じながらも、頭の中では、先ほどまで見ていた地獄が、走馬灯のように巡っている。
「ブルマ、オレを見ろ」
べジータがブルマの両手を外し、自分に顔を向けさせた。
「今はオレのことだけを考えろ・・・楽になる」
そう云うと、べジータはゆっくりと腰を動かし始めた。
「ひっく、・・・ん・・・あ」
ブルマの泣き声は、次第に甘やかに変化していった。
「べジータ・・・」
「あたし・・・」
べジータはブルマのふくらみの先を、指でつまみ軽くひねった。
「ああっ・・・!」
「あ、あたしにはべジータしか・・・・いないの・・・」
べジータが肩を動かすと、全身に激痛が走ったが、
ブルマの腰の下に腕を入れ、べジータ自身がブルマの感じる部分を、強く責められるような体勢をとった。
「ぁぁ・・・・ん」
ブルマの背中は弓なりに反り、顎がクイッと上がった。
「べジータ・・・あたしは・・・・・・・」
「べジータの腕の中だけで生きていきたい・・・・」
もちろん、そんなことは無理だとわかっている・・・
でも、そう言わずにはいられなかった。
目をそむけたくなる現実から、逃げられたらどんなに楽だろう・・・
ブルマは涙を流しながら、べジータの腕の中で果てた。
そしてべジータも、ブルマの中に自分自身を刻み込んだ。
ブルマは泣きはらして真っ赤になった目をこすり、べジータの胸に頭を寄せた。
「トランクスは、やっぱりあんたの子供ね・・・あんなに小さいのに、戦うことを知っているみたい」
「オレのガキなら当然だ」
「・・・そうね」
ブルマはトランクスを不憫に思った。
物心つく前から、戦いの中に放り出され、戦うことしか知らない生き方。
トランクスもべジータのように孤独に生きていくのだろうか・・・
トランクスは平和という意味を、知る日がくるのだろうか。
ブルマは首を振った。
人造人間には弱点がある。
ドクターゲロが、人造人間の体内に仕込んだという、爆破装置を作動させれば、倒すことはできる。
ブルマは、父親が果たせなかったものを、トランクスのために作り上げようと決心した。
「べジータ、愛してる・・・・
心から、あんたのことが大切だと思うの。
あんたがいれば・・・この地獄だって乗り越えられるかもしれないわ」
ブルマの泣きはらした蒼い瞳が、力強い光を取り戻して微笑んだ。
終
あとがき
一見、明るい未来が見えてきそうですが、本当は絶望的なエンディングです。