同じ女を求めること

第一話 声


トランクスは人造人間を倒したことを報告するために、タイムマシーンに乗り、
再び過去の世界へ訪れていた。

トランクスは、西の都の中心に立つ、ドーム型のC.Cを懐かしそうに見上げた。
こちらの世界では、セルを倒してからそう時間も経っていないが、
トランクスにとっては、実に3年ぶりの過去の我が家だった。

トランクスにも変化があった。
あれから背丈もさらに伸び、頬のあたりに残っていた幼さは消え、
ストイックに生きてきた大人の男だけが持つ、研ぎ澄まされたオーラを全身に纏っている。
(母さんに、また成長したって言われるかな?)
トランクスはブルマの驚く顔を想像すると、胸の中が熱くなるのを感じた。



「ブルマお嬢様にご用ですか?・・・・・・・あら、トランクスお坊ちゃまじゃありませんか?」
声の主は、モニターに映し出されたトランクスの姿を確認すると、
電子ロックを解除し、家の中へ招き入れた。どうやら、お手伝いに来ている女性らしい。

「お嬢様は、プライベートエリアの方にいらっしゃいますよ」
「ありがとう」
トランクスはその女性に笑顔を送ると、リビングへ向かった。

「あらーー!トランクスじゃないの!!」
3年ぶりに聞く、甲高い声の主。
「母さん!」
トランクスはブルマに駆け寄ろうとしたが、すぐに、くるりと背を向けた。
なぜなら、ブルマは小さなバスタオルを巻きつけただけの、
ほとんど裸といってもいいくらいの格好だったからだ。

「久しぶりねーー!!」
背を向けたトランクスに、ブルマはお構いなしに、後ろから抱きつく。
(な、な、な・・・・)
「人造人間を倒したんじゃないの?」

トランクスの心臓はバクバクと音を立て、勢いよくそのリズムを打ち始めた。
(なんで母さんが、こんな格好でウロウロしてるんだ)

「ねぇ、トランクス!聞いてるの?!」
ブルマは、反応のないトランクスの前に回り、その顔を覗き込んだ。

トランクスの視界に、ブルマのふくよかな胸の谷間が飛び込んでくる。
「なんて格好をしてるんですか!?」
「今ちょうど、シャワーを浴びたところだったのよ。今日も暑いしさぁ。
あ、ビールでも飲む?」
そう云うと、ブルマは冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。

ブルマの濡れた髪からしずくが滴って、ブルマの皮膚を湿らせている。
「髪を乾かさないと、風邪をひきますよ」
トランクスはドギマギしながらも、かろうじて、それだけを言った。
「・・・あんたってさぁ・・・誰に似たのかしら?これじゃ、どっちが親だかわかんないわよ」

トランクスは見てはいけないものを見てしまったように、視線を逸らしている。
これにはブルマもムッとした。
「ちょっと!あたしのナイスなボディから目を逸らすなんて、いくら息子だからって失礼なんじゃないの?!!」
ブルマはトランクスの頭を両手で挟むと、強引に自分のほうへ向けさせた。
その拍子に、バスタオルがはらりとほどけ、ブルマの胸から下腹にかけてがあらわになった。

「!!!!!!」
「きゃ!」
さすがにブルマも予想外だったらしく、両腕で胸を隠す。

「あ、あの・・・失礼します!!!」
トランクスは一瞬、その白い裸体に見とれたが、すぐに弾かれたように、リビングから逃げ出した。

その日の夕食は、トランクスの戦勝と再会を祝って、ご馳走が振舞われた。
「トランクス。人造人間と戦った時のことを教えろ」
いつもは食事に集中して、めったに会話をすることのないべジータが、珍しくトランクスに話しかけた。

「一瞬で倒すことができました。17号も、18号も。
ですから、話といっても・・・」
「そうか」
べジータも軽くあいづちをうつ。
「父さんのおかげです。
あの時、精神と時の部屋で鍛えてもらいましたから・・・」
「フン」
べジータは不機嫌そうに眉間に皺を寄せたが、どことなく嬉しそうだ。

2人を微笑ましく見ていたブルマも、会話に加わる。
「ねぇ、トランクス。あっちのあたしってさ・・・やっぱり美人かしら?」
トランクスは昼間のことがあってから、ブルマの顔がまともに見れずにいた。
「・・・・・」
「おい、ブルマ。くだらん質問などするな」
「なによ!重要なことじゃないの!!ねぇ、トランクス?
あんただって、いつまでも綺麗な母さんの方がいいわよねーー?」
ブルマは、俯いているトランクスに向かって言った。
昼間のことは、全く気にしていない様子だ。
トランクスは、ブルマの白い裸体を思い出し、
自分の頬から首にかけて、熱をおびながら真っ赤に染まっていくのを感じた。
(父さんが変に思うな)

とっさに、近くにあったビールジョッキを飲み干すことにした。

サイヤ人の血は、アルコールを好まない。
トランクスも例にもれず、自分からはアルコールを口にしなかった。
しかし今は・・・

アルコールが通過した喉は、焼けただれたように熱をもち、それと同時にカーッと頭に血が上った。
自分の頬も。真っ赤に染まっているはずだ。
「ちょっと!あんたそんな飲み方をするもんじゃないわよ!耳まで真っ赤じゃないの!」
「ははは・・・」
トランクスは乾いた笑いで、ブルマに答えた。




トランクスのいるゲストルームの寝室の時計は、すで三時半を指している。
もうすぐ夜明けだというのに、一向に睡魔が襲ってこない。
ベッドの上でゴソゴソと動いたり、じっと天井を眺めたりして、トランクスは朝が来るのを待っていた。

(眠れない・・・)
眠れなかったが、トランクスは目を閉じた。
目を閉じると瞼の奥に、昼間の光景が鮮やかに映し出される。


ブルマの白く細い首
ゆるやかなカーブを描く二つのふくらみ
その先端は、匂いたつようなピンク色に染まっていた


チラリと見えた、蒼い髪と同じ色をした繁みも、トランクスの想像を掻き立てた。
そして、ブルマが一瞬だけ見せた、恥じらいの顔・・・


(母さんは、あんなに綺麗な人だったのか)

トランクスの身体の奥底から、ある衝動が突き抜けた。



ドクン・・・



左の胸が苦しくなった。
そして・・・

(オレは、母さんを欲している?!)


(バカな・・・!あの人は自分の母親だ!
・・・・・・確かに可愛い人だと思ってはいたけど・・・)


今、トランクスを支配しているのは、道徳でもなく、正義でもなく、ただ醜いだけの・・・欲望だった。


あの美しい人の身体の中に、オレという傷を残したい
あの人が蒼い髪を揺らし、妖しく乱れるさまを見たい
そして、あの人の全てを壊してしまいたい


トランクスの脳裏に、哀願するように自分を求める、ブルマの姿が鮮明に映し出される。

(何を考えているんだ、オレは!
・・・そんな目で、オレはあの人を見ていたのか?!)

トランクスは、それをかき消そうとした。
しかし、身が焼けつくほどの欲望は、
消えるどころか全身に甘い毒をまきちらし、トランクスをいっそう苦しませた。


(あの人だけは、だめだ!・・・絶対に手をふれてはいけない!)


トランクスは、ベッドから跳ね起きた。
(どうせ寝られないのなら、頭をひ冷やしてtこよう)

手っ取り早く夜お空を飛んでみようかと思ったが、この部屋の窓は、はめごろしになっていて開かない。
しかたなく、トランクスは玄関ホールへ向かった。



誰もが寝静まり、シーンとした空気が漂う通路を、ヒタヒタと歩いていく。
冷たい床が、トランクスの足の裏を心地よく刺激し、いくらか気持ちが落ち着いてきたようだった。


(昼間、あんな格好の母さんを見たから、オレはどうにかしていたのかyもしれないな・・・)
トランクスは、ほっとしたように深く息を吐き出した。



カチャン


遠くのほうで物音がした。
(?)


トランクスはその物音のほうへ足を向けた。
行き着いた先は、リビングルームだった。

明かりはついていない。
しかし、冷蔵庫の光がリビングの一部をさっと照らし、しばらくしてまた閉ざされた。

「だれ?」
トランクスの気配に気づいたのか、闇の中から、甲高い声がする。

「母さん・・・」
「こんな時間にどうしたのですか?」

トランクスは闇の中で、ブルマに近づいた。
闇といっても、トランクスは夜目が利く。
サイヤ人の習性だろうが、暗くても大抵のものは見ることができる。

例えば、突然やってきたトランクスに驚いたブルマの顔とか・・・
ブルマが片手に持っている、ペットボトルの銘柄とか



昼間は真っ白だったブルマの胸元に、今は無残な赤いタトゥーが刻まれていること・・・とか


(母さん・・・いままで父さんといたんだ・・・)


トランクスは、心臓を細い錐で刺されるような痛みを感じた。
先ほどのように欲望の焔kに、身を焼かれることはなかったが、
この痛みは、もっとたちが悪いことをトランクスは本能的に感じていた。


(オレは父さんに嫉妬をしている・・・
・・・それは、オレが母さんを好きだと気づいてしまったからだ)





ブルマの胸元に痛々しく刻まれたそれを、トランクスは自分の唇でふさいだ。

そして、自分の苦しみを、そのままブルマの胸に刻み込むように、
痛いほどの、切ない想いを証明するように、
トランクスは、柔らかい皮膚を強く吸った。

「痛っ!!」
ブルマは突然のトランクスの行動に、驚いて目を見開くばかりだった。

他の男のつけたその愛の刻印は、新たに、トランクスによって書き換えられた。


続く


あとがき
べジvsトラのシリアスバージョンです。

今回は設定も変えてみました。
過去に来て、はじめてブルマが好きだったと気づくトランクス・・・ということで。


次回は「殺意」です。
よろしければ、読みにきてくださいね!

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