同じ女を求めること

第四話 領域


ブルマはクローゼットの中からカジュアルな麻のジャケットを選び、全身鏡の前に立つトランクスに合わせた。
「べジータは黒が似合うんだけど、あんたは明るめの色がいいわね。
ヤムチャのだけど肩幅はぴったりみたい・・・」
「・・・でもちょっとパンツの裾が短いかしら?」
ブルマは着せ替えごっこをするように、嬉々としてシャツやらベルトやらを合わせていった。

「オレ、こういうの着たの初めてです。・・・随分と動きにくいですね」
トランクスはジャケットに覆われて窮屈になった肩のあたりをくるりと回し、
ポケットに手を突っ込むと、鏡の前でポーズをとって見せた。

「べジータと同じことをいうのね。
まったく・・・サイヤ人ってのはおしゃれに興味がないんだから!」
ブルマはつまらなそうに両手を腰にあてた。

「でもあんた、そういう格好も似合ってるから、きっと女の子にモテるわよー」
ブルマはそう言ってから、しまったと思った。

昨日の夜、トランクスに愛の告白をされていたのを忘れていたのだ。
案の定、トランクスは小さくため息をついた。

「オレは母さん以外の女性には興味がありませんから・・・」
「あ、あー。そういう意味じゃないのよ!うん、そうよ!
ほら、モテることは男の勲章ー!・・・っていうじゃないの」
ブルマは空々しく言い訳をしたが、女性云々に関してもサイヤ人はほとんど無関心なことは、
べジータを見ていればわかる。


べジータと一緒に街を歩いていると、目立ってしょうがない。
どこが・・・というわけではないのだが、ある種のスゴみが全身から漂っているのだろう。
そのべジータの持つ強いオーラ、つまり存在感にみんな圧倒されてしまうのだ。
男性はそれを威圧と感じ、女性はセクシーだと思うらしい。

強い男性が好きな女性たちは、敏感にべジータのオーラを嗅ぎわけ、
たとえ側にブルマがいても遠慮なしによりつく。

それでもべジータは女達に無関心だ。
きっとべジータの血をひくトランクスも似たようなものなのだろう。



「気を使わなくてもいいんです。オレは気長に待ちますから。
昨日みたいなことはしませんよ
・・・約束します」
トランクスは寂しげに笑った。

ブルマの胸がチクリと痛んだが、こればかりはどうしようもない。
言葉を重ねてもトランクスを傷つけるだけだ。
(あたし好みのいい男なんだけどね)




トランクスはふうっと深い息を吐くと、気を取り直したようにブルマを振り返り、
手を差し出した。
「ジェットフライヤーはオレが運転します。
今日は母さんをエスコートさせてください」
「あら、キザな男ね。
どうせなら素敵なパーティーでエスコートしてほしいところだけど・・・
仕事じゃあねぇ。
ま、仕事でいい男を連れ歩けるあたしも幸せ者かしらね」
ブルマはトランクスにパチンとウインクを送った。



べジータは重力室で午後のトレーニングを始めるところだった。
朝っぱらからのトランクスの一件でべジータは不機嫌になっていて、
午前中のトレーニングをしていても今ひとつ調子が出なかった。
(チッ。オレとしたことが・・・)
トランクスのこともブルマのことも忘れたかったため、
重力数値の設定を、いつもより倍の設定をすることにした。


装置が可動し始め、徐々に体に負荷がかかってきた頃に突然スイッチが切られた。
「ちょっと!!!なによ、この数値の設定は!!
あたしこれから出かけるの!だから、重力室が壊れても修理できないし
あんたが怪我をしても助けられないわよ!」
モニター越しにブルマの怒鳴り声が聞こえたかと思うと、すぐに重い扉が開かれ、
べジータの前に立ちはだかった。

「邪魔をするな」
べジータはブルマの脇をすり抜け、
もう一度数値設定をするためにコンピューターの前に立った。
が、トランクスがモニター越しに自分を見ていることに気づく。
トランクスに 意味ありげな視線をやり、ブルマの方へ戻っていった。

「なるほどな、トランクスのやつと出かけるってわけか・・・」
べジータはすぐにトランクスの意図に気づいた。

べジータはブルマの仕事に干渉しない、というよりも興味がない。
トランクスはそこに目を付け、べジータのテリトリー外からブルマに近づいて行こうと考えたわけだ。
(フン)
べジータはトランクスの存在を意識しながら、ブルマの頭を自分に引き寄せ、
そして、その唇を吸った。

あっという間の出来事に、ブルマは目を閉じる時間すらなかった。

ブルマがパッチリと目を開けているのに気づき、
べジータは「目を閉じろ」と小さな声で命令する。
言われた通りにその大きな瞳を閉じると、べジータの舌がブルマの中に侵入し、奥を探っていった。

「ん・・・」

鋭い快感が、ブルマの身体の中心から突き抜けていくのを感じる。

(これから仕事なのに・・・!)
べジータの引き締まった舌にブルマは舌を絡めとられ、
次第に頭の中に白い靄がかかったように、ぼうっとしてくるようだった。

ブルマはべジータの首に自分の腕を回す。
べジータは唇を離し、いつになく真剣な眼差しをブルマに向けた。


「いい女だ・・・」


「続きは、貴様が帰ってきてからだ」
べジータはブルマにもう一度キスをすると、モニターから自分達を見ているトランクスに視線をやった。

「せいぜい頑張るんだな、トランクス」


「・・・っ!」
トランクスは拳を握り締めた。





トランクスは怒ったような目をして、ジェットフライヤーのステアリングを握っていた。
「母さん」
「なに?」
「・・・オレは少し甘かったようです」
「え・・・?」
「父さんと張り合うには、もっとあなたに強引にならなければいけないのかもしれない」
トランクスの目からいつもの優しさは消え、
瞳の色こそ違うが、べジータと同じ鋭い目をしてブルマを見た。

「約束をしましたから、あなたが望むまでオレは抱きません・・・
でも・・・・・・」

トランクスは片手をステアリングに置いたまま、ブルマの髪を指ですくい、
軽く唇が触れる程度に唇をあわせた。

「・・・・・」
「これくらいは許してください・・・
それから、オレが母さんのことを名前で呼ぶことも・・・」

「トランクス・・・」

ジェットフライヤーのメーターパネルは既に380キロをさしている。
相当のスピードが出ているのは、トランクスの急いた心を表していた。

(父さんと母さんのあんな場面を見るとは思わなかった)
トランクスは再び湧き上がる嫉妬の炎を鎮めるために、
もう一度ブルマの唇に、今度はしっかりと自分の唇をあわせる。

トランクスの苦しそうにゆがめられた表情に、
ブルマはその口づけを拒むことができなかった。

(かわいそうな、トランクス!
あたしもあんたを愛してるけど・・・でも、それは・・・)


ブルマは漠然と思った
トランクスが自分の息子だという事を忘れ、
一人の男として愛してしまう日がくることを


続く


あとがき

ほへー。
キスには、キスを。

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