同じ女を求めること

最終話


オレは何故、ブルマをトランクスの元へ行かせたのだろう
あいつに命を助けてもらった借りを返すためか?

いや、違う
オレはそこまで甘くはない

ただ、あいつの中に、オレを見た

フリーザ軍でひたすら殺戮を繰り返してきた時と同じ
やすらぎという言葉さえ知らなかった
あの時のオレを
あいつの中に見たからだろう

あいつはオレの一部でもある
だからこそ、ブルマを渡したくはなかった

しかし

トランクスのことは黙ったままではいられなかった
勝手に未来に帰るという男のことなど、ほっとけばいいものを
馬鹿みたいにわざわざブルマをあの男の元へ行かせた


ブルマはオレの元に戻ってくるだろう
必ずだ

ならば、今だけ
目をつぶっていてやる

ブルマがオレの元に戻ってくるまでの少しの間
オレ自身の時間をとめておいてやろう


そう言い聞かせていたのは
オレの強がりだったのだろうか


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「この部屋ともお別れですね」
短い間だったが自分の部屋としてあてがわれたその場所を、トランクスはぐるりと見回すと
荷物を詰め込んだカプセルをテーブルの上に置いた。
ブルマになにか書置きでもしておこうか。
しかし、一体なんと残せばいいのだろう。
伝えたいことを考えてみたが、でてくる言葉は未練ばかりだ。
(あの人は未練たらしい男は嫌いだろうな・・・)

トランクスは部屋の明かりを消し、未来へ帰るために窓を大きく開けた。
と、その時

「待って!」
出入り口の扉が開き、ブルマが駆け込んできた。
「待って、トランクス!!」
トランクスは一瞬迷った。
このままこの窓から飛び出せば、ブルマは追ってくることができない。
(この窓から飛び出すだけだ、それで全て終わるんだ)
しかし、トランクスの一瞬の迷いがブルマに腕をつかませることになった。

「あたしに内緒で帰るなんてひどいじゃないのよ!」
ブルマは眉を吊り上げ、部屋中に響き渡る声でトランクスを怒鳴りつけた。
「なんとか言いなさいよ!」
トランクスは、自分にまっすぐに向けられたブルマの視線から、たまらずに目をそらした。
「どうしてなの?どうして急に?」
「・・・・」

トランクスは深いため息をひとつつくと、窓際から離れ、ソファに腰をおろした。
「あなたはオレより父さんを選んだ。
父さんが心臓病で倒れた時、あなたの目にはオレは少しも映ってはいなかった。
だったら、オレは去るしかないでしょう?」

「だって、あの時はべジータが死ぬかもしれないって時だったのよ!
当然じゃないの!」
「当然・・・。・・・そうですね。
でも、もし倒れたのがオレだったら、あなたはもっと冷静でいられたでしょう?
きっと、父さんにすがりついて、オレのために涙を流す余裕があったでしょう、あなたには!」

「そんなのわからないじゃないの!」
「わかりますよっ!オレにはわかっちゃったんですよ!
オレがいくら頑張ったところで、あの男には・・・父さんにはかなわないことが!」
トランクスは声を荒げ、前髪を両手で書き上げるようにして額を抱えた。
「・・・トランクス・・・」

「オレはあなたが好きなんです!
だから、あなたがオレを選んでくれるまで待つつもりだった。
毎日、父さんとあなたが肌をあわせていると思うと、冷静ではいられなかったけど
それでも耐えようとしていたんです。
あなたは知らなかったでしょう?
オレの腹の中は、あの男への嫉妬でいっぱいだった。
・・・何度あなたを強引に奪おうと思ったか・・・」
トランクスは顔をあげ、べジータそっくりの意地の悪い笑みを浮かべた。
「あの時、オレはあなたを抱くべきだったんでしょうね・・・
あなたはその気でいたんだから」
トランクスはフンと鼻で笑った。
「・・・そうしたら今とは状況が変わっていたかもしれませんね。
いや、変わらないか・・・オレがみじめになるだけですね」

ブルマはつかつかとトランクスに寄ると、その頬を思い切り叩いた。
パンッという切れのある音が部屋に響き渡る。

トランクスは目を大きく開き、ブルマを見上げた。
ブルマは怒りの表情を押し殺すように眉を吊り上げたまま、唇は真一文字に閉じられている。
トランクスはブルマの言葉を待った。
しかし、沈黙という冷たい空気が2人の間に横たわるだけで、時間だけが経過していくように思えた。

先に折れたのはトランクスだった。
折れたというよりも、頭が冷えたという方が正しいかもしれない。

「すみません・・・
八つ当たりをしてしまいました・・・あなたにはなんの関係もないことなのに。
あなたには初めから父さんがいるのに、勝手に好きになって、勝手に嫉妬して、
あなたにひどいことを言ってしまった」
トランクスは自己嫌悪に陥ったものがそうするように、自分の唇を噛み締め、硬く目をつぶった。

「あなたに言わずに帰ろうとしたのは、
オレがこうなることが・・・なんとなく分っていたからかもしれませんね。
あなたの記憶の中で、最高のオレを演じていたかったんですが・・・」

トランクスはいつもの優しい笑顔に戻る。

「トランクスっ!」
ブルマはソファに座っているトランクスの膝の上に乗り、トランクスを力いっぱい抱きしめた。
「っ・・・」
「バカなトランクス・・・」
そして、自分の唇を重ね、トランクスの引き締まった下唇を甘く噛んだ。
お互いの唇を貪りあったまま、ブルマはトランクスの首から腕を解き、
タンクトップの下の鍛え上げられた筋肉を指で撫で、反対の手はベルトを探り当て、
カチャリという金属音とともにバックルを外した。

トランクスの動きが止まる。
「・・・同情ですか、それは・・・?」
トランクスは、寂しそうな父をみてついなんとなく関係をもってしまったという、母親の言葉を思い出した。
「違うわ。あたしもあんたを愛してるのよ。
べジータはあたしの気持ちに気づいていたみたいだけどね」

「親の愛情ですか・・・」
「馬鹿ね、あたしの息子は小さなトランクス一人よ。
覚えておいて。あたしもあんたを確かに愛していたのよ」
トランクスは複雑な表情を作った。どう解釈したらいいのだろうというように・・・

「愛の証よ、これは。
あんたとあたしだけのね」

そう言うとブルマは再びトランクスの唇を吸い、トランクスのタンクトップを捲り上げ、
腰をずらしトランクス自身の上に、自分の体重をかけた。
服の上からだったが、トランクスを感じる。

トランクスもブルマのシャツの下に手を入れ、
そのふくらみをすくうように掴み、先端を指でさすった。
唇を離し、今度はその尖った部分を口に含み、舌を躍らせた。
ブルマは甘い吐息を吐く。

トランクスはブルマを抱き上げると、ベッドへ運び静かに寝かせた。
起用にジャケットを脱ぎながら、ブルマの上に覆いかぶさり、
大きくシャツとミニスカートを捲くりあげた。
すばやく下着に手をかけ引き摺り下ろすと、自分の中指を第二関節までブルマの中に埋め込み、
熱い液体があふれるその内部を擦った。
ブルマが小さく悲鳴をあげる。

トランクスの唇が再びブルマの青白く光る胸のふくらみの先端を咥えると
ブルマの中に起こる幾つもの快感が波のように押し寄せ、
もどかしそうにトランクスの衣類を剥いだ。

生まれたままの姿で抱き合うブルマとトランクス。
外から照らす月の光が、あやしくその姿を浮かび上がらせていた。

「いいんですね・・・」
これから始まる儀式に、トランクスは神妙な面持ちでブルマに問いかけた。
小さく頷くブルマ。その顔には迷いはない。

トランクスはブルマの両肢を掴むと大きく広げ、その中心に自分自身をゆっくりと埋めていく。

「あぁ・・・・・」
ブルマは僅かに顎をあげ、背中を弓のように反らし、
トランクスも苦しそうに眉をひそめた。

トランクスはそのまま腰を使い、ブルマの中心を自分のモノで突いていく。
そのたびにブルマの喉の奥から甘い喘ぎ声が漏れた。
トランクスは満足そうに腰を強く打ち付けていき、
愛の言葉を耳元で囁くとブルマを何度も果てさせた。

「トランクス、愛してる」
ブルマはうわ言のようにその言葉を口にした。
トランクスは唇を重ね、その言葉をひとつ残らず受け止めるように飲み込んでいく。

今だけの愛の言葉
それでもトランクスには十分だと思った。
最愛のブルマの奥に入り自分を示す。
確かに今、トランクスとブルマは深くつながっている。

「トランクスもイって・・・一緒に・・・」
頬を朱に染め、ブルマがトランクスの首にしがみつきながら言う。
トランクスはブルマの腰の下に腕を入れ、少し持ち上げると、
これ以上もなく深い部分を何度も突き上げた。

「あっ・・・あんっ・・・」

「あぁーっ、イや、トランクス・・・お願い・・・!!」

ブルマが痙攣しトランクスを締め上げようとする。
「・・・!!」

トランクスも一瞬、意識が飛ばされたように、頭の中から全てのことが消えた。


トランクスは深い呼吸をし、ブルマに体重をかける。
ブルマの中に注ぎ込まれた熱い愛の証が、太ももを伝って流れ出る。
トランクスはしっとりと汗ばんだ上半身を少し起こし、ブルマにキスをした。

「もう、あなたを誰にも触れさせたくない・・・」






「冗談ですよ・・・
言ってみたかっただけです」


トランクスはそう言うと身を起こし、ブルマにシーツをばさりとかぶせた。
「帰ります。
これ以上あなたといると、気絶させて、そのまま未来へつれて帰りたくなってしまうから」

トランクスは衣類を身につけると、ベッドの上でシーツを巻きつけて座っているブルマを抱いた。
(本当に、このままつれて帰ってしまおうか・・・)
トランクスはブルマの細い首に手を当てた。
少し閉めれば、気を失うだろう。
だが、未来へつれてこられたブルマは自分を恨むかもしれない。
結局、同じことだ。
ブルマがべジータを選ぶことには変わりはない。


トランクスは身を離し、窓を開け、さよならと言う。
「待って!トランクス」
ブルマは床に落ちた自分の衣服をごそごそと探り、ポケットの中からバッジを取り出した。

「これはあんたが持って行って。
・・・2週間前にあげたときは銀色でピカピカに光っていたのにね。
今じゃすっかり艶がなくなって、まるでベテラン社員のバッジじゃないの・・・」
そういうとブルマはトランクスの手の平の上に、そのバッジを乗せた。

「こちらの世界であなたに鍛えられましたからね。
オレは戦いの他にも、こっちの方にも才能があるみたいですよ」
トランクスは冗談めかして言った。

「カプセルコーポレーションのことは、あんたに頼んだわよ」
「・・・はい」

そういうと、トランクスはあっという間に消えた。





ブルマの心の中に、大きな穴が開いた。
この穴をべジータで埋める気はない。

ブルマはそれをずっと背負っていこうと決める。


壁にかけられた時計をみると、1時間程度しかたっていないようだ。
ブルマは自分の肩を抱きしめ、トランクスの余韻を噛み締めた。
(トランクス・・・あたしは本当にあんたを好きだったのよ)







開いた窓から、騒ぎ声が聞こえた。
随分と盛り上がっているようだ。

ブルマは衣服を整えると、皆の元へ戻ることにした。
多分もうべジータはいないだろう。






エピローグ

「おいブルマ、重力室が壊れた」
相変わらずべジータは毎日のトレーニングを欠かさずに行い、
重力室を壊してはブルマに文句を言われていた。

あれからべジータは何事もなかったように振る舞い、トランクスのことを聞くことはない。
あの時、ブルマをトランクスの元に行かせたのはべジータだ。

見なかったことにすると言ったとおり、変わらずにべジータなりにブルマを愛し、そして大切にしている。

ブルマがトランクスのとのことを心の奥に眠らせているように、
べジータも何かを思っているのだろう。

それでも、ブルマの全てを受け止める。



べジータは気まぐれにブルマに言った。
「一度しか言わんが、貴様を喜ばせてやろう」
「なに?」




「・・・このオレのナンバーワンは貴様だ、ブルマ」





ブルマの頬がほのかに赤く染まったのを、ベジータは見逃さなかった。




(2005.9.5)



あとがき
長い間お疲れ様でした!!
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

はじめは4話くらいで終わらすつもりだったのですが、
書いているうちに面白くなっちゃいまして、ここまでひっぱってしまいました。


書きはじめた時から、ゴールは決まっていたんですが(トラとの体の関係をもたせること)
最後の最後で迷ってしまいました。
もっと濃厚に切なく描くつもりが、あっさりしたものになってしまったのは、
私の迷いがあったからですーー(><)


どうもありがとうございました!!

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