若社長の憂鬱 4

「社長お疲れ様でした」
トランクスは拍手喝さいの中、壇上を降りた。
15分の休憩の後、問題の質疑応答が始まる。
トランクスは予定通り、後半の質疑応答を自分がやるつもりでいた。
(母さんならきっと中止にはしない)
もちろん、ブルマの秘書は反対していたが、それでもトランクスは目の前の事から逃げたくなかった。
(これは、オレの戦いだ)
しかし、いまだに会場にあらわれないブルマのことが気がかりだった。

15分の休憩の間に少し探してみようか・・・
そう思って上着を脱ぎ、秘書の男に手渡した。

「!!!!」
トランクスの脳にブルマの気が直撃した。
「母さん!!!」

トランクスは金色の髪を逆立て、ブルマの気の感じる方向へ飛び出した。
部屋には一筋の風と、窓の外を呆然と見つめる男だけが残されていた。

トランクスがブルマの姿を確認したのは、ブルマと大きなバイクが岩壁に吸い寄せられるようにタイヤがロックしたまま滑っているときだった。
「母さん!」
トランクスはスピードを上げると、間一髪、ブルマの肩を引っ張りあげた。
マシンが岩に激突し、爆発音と共にもうもうとした白い煙と、小さな金属片が舞い上がった。

「ふぅー」
あぶないところだった・・・トランクスは額の汗をぬぐおうとした、その時・・・。

「おい」
聞き覚えのある声がした。
トランクスは声の方向に顔を向けた。
「と、父さん!」
べジータはトランクスとは反対側のブルマの腕をつかんでいた。
「何処から・・・来たんですか・・・?」
「ブルマの気を感じたのはお前と同じだろう。フン。随分とのんびりしてやがるぜ。自分の母親を殺す気か?」
「なんだって?!オレが電話をした時、あなたは母さんのことを気にもかけなかったじゃないですか!」
「馬鹿か、てめえは」
いくらべジータが超サイヤ人になったとしても、あの数秒の間に西の都からここまで来られるわけがない。
瞬間移動のできる孫悟空とは違うのだ。
トランクスの電話を受けて、べジータは気を探りながら検討をつけてここまで来ていたのだった。
「父さん、相変わらず人が悪いですね・・・」
トランクスは二コリともせずにブルマをべジータから奪い取ると、大切そうに両腕に抱きかかえて地面に着地した。
「フン。さっさと連れていくんだな。気絶しているがじきに目を覚ますだろう。まだ講演会とやらには間に合うんだろうが」
「あなたに言われなくてもそうします」
「・・・その前に、ブルマのその下品な格好をなんとかしておけ」
ブルマのタイトスカートは太ももまで引き裂かれ、ストッキングはボロボロのまま足にへばりついて、さらには着崩れた上着の胸元からはブラがチラチラと見える。
「は・・・!!?」
トランクスは自分の抱いているあられもないブルマの姿に戸惑った。
「チッ」
べジータは舌打ちをし、自分のシャツを投げてよこした。
どうやらブルマに掛けてやれということらしい。
トランクスはべジータのシャツでブルマをすばやくくるんだ。
「早くいけ。時間がないんだろうが」
トランクスはべジータに視線をやると、小さくうなずき飛び立っていった。

「さてと」
べジータは不敵な笑みを浮かべると、顎を空に向けた。
視線の先にある一台のジェットフライヤーに向けて、指先をまっすぐ伸ばし気を放つと、ひゅるひゅると音をたてジェットフライヤーは落下していった。
「殺されなかっただけ、ありがたいと思うんだな」

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講演会はトラブルに見舞われたが、表向きは大成功に終わったと言ってもいい。

意識を取り戻したブルマは、後半の部から出席し、開発者達と時折ジョークも交えながら議論を楽しんでいた。
ブルマが襲われたことが、知られていなかったことは幸いだった。
そして、トランクスも高い評価を受けることとなった。

「母さん、あまり心配をかけないでください」
「あんたが助けに来てくれて良かったわー。でなきゃ、あたし死んじゃってたわよ」
ブルマは自宅のリビングでトランクスと二人、缶ビールを片手に夜更かしをしていた。
「父さんも、母さんを助けに来てくれたんですよ」
「べジータが?!」
「はい、すぐに帰ってしまったんですが・・・」
「へーぇ」
「正直妬けましたよ、父さんには」
「ふーん」
ブルマは缶ビールをぐいっと飲み干して3本目のプルタブを引いた。
「そういや、あたしをひどい目にあわせた奴ら、ものすごい怯えてたわよ。警察に自首したいって泣いてるのよ。きっとべジータが相当脅したんだと思うわ。一昔なら殺されてたんじゃないかしら?随分地球になじんだわね、あいつも。」
「あいつら、アンティークバイクのマニアだったみたいですね」
「そう、コレクターと言われる人達ね。C.Cが浮遊技術のパテントをとる前に生産した車やバイクは、名車と呼ばれるものが多いわ。あたしもいまだにプロペラ機とか持ってるけどさ・・・とにかく、まあハイスペックがどうのこうの、とかいうんじゃないわけよ」
ブルマは一息つくと、ソファのヘリに肘をかけ、トランクスと向かい合う形になった。
「金目当てじゃなかったわけですからね。なにか母さんに訴えたいことでもあったんじゃないですか?」
「多分ね。ま、C.Cは今後宇宙事業に本格的に参入するわけだけど、それが気に入らなかったんじゃないかしらね」
「それだけ・・・ですか?」
「気持ちはわからなくもないわよ。でもレディにこんな傷を負わせたんだから、あたしは許してやんないけどさ」
ブルマはアザや擦り傷でそこらじゅうに貼られたシップをペチペチと叩いた。
許してやらないといいつつも、ブルマは警察に引き渡さずにC.Cに留めていた。
(なんとなくね・・・あいつらあたしのGo-kuを大切に持っていたしね。じゃなきゃエンジンなんかかからないわよね)
「でも、母さんが無事で良かった」
「あらー大丈夫よ。あたし運はいい方なのよ。それにさ・・・」
「何かあったって、べジータがいるから平気なんじゃないかしら」
トランクスはブルマが頼りにしているのは父親だとハッキリいわれ、小さく肩を落とした。
ブルマはその様子を可笑しそうに見つめると、トランクスの頬にチュとキスをした。
「ありがとね、トランクス。これからも頼りにしてるわよー」
「ど、どうも・・・」トランクスは真っ赤になって俯いた。

「そうそう、今日のあんたの講演ね」
ブルマは甘い余韻をぶち壊すようにあっけらかんと話始めた。
「ビデオを見たけど素敵だったわよー」
「・・・それは、及第点ということですか?」
「うーん。ま、サービスして50点ってとこかしら?」
「ご、50点?!オレ・・・結構評価は良かったんですが・・・」
「あんた、あたしの原稿読んだだけじゃないの。それに、あたしが来なかったら後半もあんたがやるつもりだったんだって?」
「はい、オレも関っていたし、大抵の質問には答えられると思ったんで・・・」
「あっまいわね!突っ走るだけが戦いじゃないのよ。引く決断もときには必要なことがあるの。覚えておきなさい」
「すみません」
「あやまることはないわ、社長さん」
ブルマいたずらっぽくウインクをした。

トランクスがブルマとの楽しい(?)ひと時を終えて部屋に戻る途中、べジータに出くわした。
というよりも、べジータは廊下の壁に腕をくんでもたれかかっていたことから、トランクスが戻る頃を狙って待っていたのかもしれないが。
「おい」
「父さん、まだ起きていたんですか?それならリビングに来て一緒に飲めば良かったのに・・・」
「フン、貴様らのくだらん会話などにいちいち付き合ってられるか。それよりトランクス、今日のアレはなんだ」
「アレ・・・?」
「とぼけるな!オレよりブルマの近くにいたんだろう、貴様が間に合わずにブルマがあのまま激突していたらどうするつもりだった。修行をサボりやがるからだ。今日は運が良かっただけだと思え」
べジータは強い口調でそれだけいうと、トランクスの脇をスッと通り過ぎて行った。
「父さん!明日からの早朝トレーニング・・・オレもやります!稽古をつけてください!」
トランクスは遠ざかっていくべジータの背中に言葉を投げかけた。
べジータは振り返りもせずに言った。
「甘えるな、トランクス」
その言葉とは裏腹に、べジータの口調には優しさのようなものがにじみでているような気がした。
トランクスは少し頬を緩めると、べジータの背中を見送り、自分も部屋に向かって歩き出した。

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「トランクスくん、ニュースで見たよ。見違えたね、ちゃんと社長業をしているじゃないですか」
悟飯はトランクスに熱いコーヒーを勧めると、自分のカップに砂糖を入れてクルクルとかき混ぜた。
「社長ですから・・・ははは」
トランクスは乾いた笑いで答えると、差し出されたコーヒーをゆっくり啜った。
「これから忙しくなるね、悟天も寂しがるからたまには遊びに行ってやってよ」
「はい、オレもたまには息抜きしないとつらいですから。それにしても・・・悟飯さんは宇宙最強までなったのに、ちゃんと小さいころの夢を実現して学者になってしまうなんて凄いですね」
「宇宙最強は言い過ぎだよ。それにボクは勉強することが楽しいんだ。半分はサイヤ人だけど戦うのはあんまり好きじゃない・・・と思う」
悟飯は白い歯をチラリとこぼし、はにかむように笑った。
「トランクスくんはC.Cを背負っていくのかな?ブルマさんは安心するだろうね」
「安心かどうか・・・昨日も結構厳しいことを言われましたからね。父さんからもか・・・。オレもまだまだだな」
トランクスはコーヒーカップを両手で包みこむと、膝の上にアゴをのせ上目遣いで悟飯を見た。
その表情は年相応で、トランクスと同年代の青年同様遊んだり、恋をしたりしたい年頃なんだなと悟飯は思った。
「トランクスくん、いい人を見つけなよ」
悟飯はボソッと言った。
「・・・?」
「ブルマさんじゃなくて、さ」
「どうしてそんなことを言うんです、悟飯さん?オレの気持ちは変わりませんよ」
トランクスはムキになって言った。
「はは・・・」
悟飯は力なく笑ったが、トランクスはお構いなしにブルマへの想い切々と悟飯に訴えはじめた。







あとがき
「憂鬱」ではないですね。憂鬱そうなトランクスは書けませんでした。
タイトルミス(><)
仕事をするDBキャラは自分的に苦しいので、しばらくはこのネタから離れます。

GTを見始めました。
あのトランクスは社長の設定って聞いていたので、このネタを書いたのですが・・・
トランクスってずっとあんなキャラなんですかね?それともギャグマンガだから?
しばらく見続ければ、カッコよく戦ったりするんですかねぇ??
いろんな疑問と不満を持ちながら、結局、毎週ビデオで見ています。
(でもあの内容を30分見続けるのはツライので、本を読みながら)

トランクスの言葉遣いについて
現代トランクスバージョンは原作からはつかみづらかったので、未来バージョンにしてしまいました。
違和感があったらごめんなさい。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


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