プライド

「まったく、なんなのよコレは!」
ブルマはC.Cのエンブレムのついたニューモデルのジェットフライヤーを、西の都に向かって飛ばしていた。

ベジータに頼まれていた戦闘服の開発のため、数日前から北の研究所にプロテクターとアンダースーツの分析を依頼していたのだ。
C.Cでもいくつかの施設があるが、どちらかというとメカの他は専門外なので、より詳しい分析結果を得るために北の権威といわれている博士の研究所へ持ち込んだのだが、帰ってきたデータは半分以上も使い物になりそうになかった。

「あのエロ博士、偉そうなことを言ってたわりには大したことないわね!」
ブルマはジェットフライヤーを自動操縦に切り替えると、先程受け取ったばかりの書類を丁寧にチェックしていった。
「・・・成分だけでも分かればと思ったんだけどなぁ。これじゃ、ウチで分析したものと変わらないじゃないの。」

_______________


C.C 1ヶ月前

「おい。女。」
重力コントロール室でトレーニングをしていたベジータは、通信モニター越しにブルマを呼んだ。

「なによ?あたしにはブルマっていう美しい名前があるんだけど?」
「貴様の名前などどうでもいい。」
(よくないわよ。)
「これと同じものを作れ。」
ベジータは破れたプロテクターとアンダースーツを脱ぎ捨てると、重力室のロック解除ボタンを押し出ていこうとした。
「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ!」
ブルマは反射的に重力室のロックスイッチを押すと、ガチャッという鈍い金属音とともに重力室と外界とを遮断した。
「なんであたしがアンタに命令されなきゃならないのよっ。」
そう言ってからブルマははっとした。
ベジータの眉間に不機嫌そうな皺が寄っていたからだ。
(あわわわ・・・あたしってばついいつもの調子でやっちゃった。相手はベジータだっていうのに!)
ブルマが怯えた顔をすると、ベジータはフンッと鼻をならし静かに言った。
「3年後に人造人間に殺されたくなかったら言うとおりにするんだな。」
そう言うと、重力室の扉を破壊して出ていってしまった。

ブルマは重力コントロール室の調整ルームから駆け下りると、煙がもくもくと立ちこめる室内に入っていった。
「わざと壊したわね!いったいあたしを何だと思ってるのよっ。」
ブルマはぶつくさ言いながら、ベジータの脱ぎ捨てたボロボロのプロテクターを拾い上げた。

(あら?・・・)
拾い上げたプロテクターは思ったより軽く、上下左右にひっぱるとどこまででも伸びた。
(一体なんの素材を使ってるのかしら??)
先程の怒りや、ベジータを怒らせてしまった恐怖はを忘れ、ブルマの好奇心は目の前のプロテクターへと移っていった。

_______________

ブルマの乗ったジェットフライヤーが西の都の上空に辿り着いた頃、C.Cのあたりから夕暮れに吸い込まれるように夜空に消えていったものが見えた。

「あ!」ブルマはそばに置いてあったスカウターを耳にはめるとカチカチとボタンを押した。
スカウターの小さなモニターには北の方向に向かっている大きな気のポジションがグリーンの矢印となって示されていた。
「まちがいない、今のはベジータだわ。何処へ向かってるのかしら?」
(プロテクターのことで色々聞きたいことがあったのに、あいつしばらく帰ってこないかもしれないわ。)
ブルマはしばらく北の研究所からのデータを眺め、またベジータの消えた方向を見つめるとジェットフライヤーを大きく旋回させた。

(・・・?!)
ベジータはこちらに向かって来ている小さな気があることに気付いた。
あの地球人の女だ。
いったい何のマネだかわからないが、ベジータはこのまま付いてこられてもうっとおしいと思い、しばらくブルマが追い付くのを待った。

「あ、あれね!」
ブルマはベジータを確認すると、平らな岩場を見つけジェットフライヤーを着陸させカプセルに戻した。

「貴様、オレのあとをコソコソ付け回して一体何の用だ。」
「コソコソなんてしてないわよ!ちょっと、プロテクターのことで聞きたいことがあったの!」
「・・・フン。いいだろう。低文明でまぬけな奴しかいない星だが、貴様は少しはまともな部類に入るからな。おしえてやろう。」
ブルマはカチンときたが、ここで言い争ってヘソを曲げられても困ると思い、素直にプロテクターの成分や製造工程、耐久テストや使用環境、開発された星のこと、等々・・・考えられることを矢継ぎ早に質問した。
ベジータの答えはどれも簡潔で、専門的な答えはあまり期待していなかったブルマにとって正直驚き、感心するものだった。
(ただの戦闘マニアのサイヤ人かと思ってたけど、こいつ、孫くんとはちょっと違うみたいね)


「それより貴様、こんなところまで来るくらいだから少しは戦闘服の開発は進んでいるんだろうな。」
(ドキッ)ブルマは一瞬狼狽えたが、すぐに気を取り直して腰に手を当てるとキッパリと言い放った。
「あったりまえでしょ!あたしは超天才なのよ!顔もかわいいけどさ。アンタの着ていたものよりもっとすごいの作っちゃうんだから!!」
「フン」
「1ヶ月だ・・・。1ヶ月たったら戻ってくる。それまでになんとかしろ。俺の満足いくものを作れなかったら貴様は殺すぞ、覚悟しておくんだな。俺は役に立たないゴミに用はないんだ」
そういうと、ドンッという音とともに飛んでいってしまった。

「あ、ちょ、ちょっとべジータ!」
「・・・勢いであんなこと言っちゃったけど・・・ま、1ヶ月もあればなんとかなるか」

ブルマはC.Cに着くなり父を捜してダイニングルームに飛び込んだ。
「ただいまー!父さん!しばらく研究室借りるわよ!」
「あらぁブルマさん、お夕食は?」
「今日はいらないわ!父さん食事が終わったらちょっと手伝ってほしいの。ベジータのプロテクターのことで!」
そういうと、バタバタと研究室の方向へ駆けだした。


「なんじゃ、せわしないのぅ」
「あらあら、ブルマさんはベジータちゃんがお気に入りなのね♪」

_______________

1ヶ月後


重力コントロール室にはブルマによって開発されたアンダースーツ、プロテクター、そして白いグローブをはめたベジータが、耐久テストを兼ね次々に気弾を放っていた。


ものすごい爆発音とモクモクと立ち上がる煙の中から、満足そうな笑いを浮かべたベジータがすっと現れた。
ブルマはプロテクターの出来に満足しているべジータを確認しモニター越しに話かけた。
「どぉ?C.C製のプロテクターの出来は?」
「フン。・・・まあまあだな」
「素直じゃないわねー。・・・で?」
「私は殺されずにすんだのかしら?」
「フン。貴様はこのオレに殺されたかったのか?」
「あたしは『貴様』じゃないわ!・・・超天才でかわいいブ・ル・マよ」
「くっ。・・・調子にのるな。トレーニングの邪魔だ。さっさと消えろ」
「な、なによ!せっかく人が作ってやったのに!ろくに寝てないからお肌だってボロボロなのよ。少しくらい役にたったんなら、名前くらいちゃんと呼んでくれたっていいじゃない!」

「フン。いいか!今度は重力室の設定を150Gまであげておくんだ!」


「・・・わかったかブルマ!」
ベジータはそう言うとフイッとソッポを向くと、トレーニングを始めだした。

ブルマはそっぽを向いたベジータの頬にほんの一瞬赤みがさしたのを見逃さなかった。



(ほんっと、素直じゃないわねー。)

(でも・・・ま、いいか。)



あとがき
初めてのSSです。読みづらくてすみません。
べジータはいつからブルマを名前で呼び始めたんでしょうね。
そんなきっかけを書きたかったんですが・・・
また、機会あったら書き直したい(><)

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