「愛してる・・」
「・・・」
「ねぇ、愛してるってば!」
「・・うるせえ」
「もう、いい加減ちゃんとした返事しなさいよ」
ブルマは不満げに男の身体を押しのけた。
 これまで幾度となく男に向かってささやいてきた極上の告白も、男には何の意味もないらしく、それは単に煩い戯れ言にしか聞こえない。
「ほんと、あんたって変わってるわよね」
「なぜだ」
「だって、ふつう女から『愛してる』なんて言われたりしたら、それこそ鼻の下伸ばすわよ」
「オレは地球人のくだらん男どもとは違う」
そう言うと、ベジータはブルマを抱き寄せる。
 言葉なんぞくだらない。正直、彼はそう思う。
なぜなら、言葉は時に裏切るものだから。裏切られるのは一度でたくさんだ。
 彼の一瞬見せた苦々しい表情を、ブルマは見逃さなかった。
「・・何かあったの?」
「・・急に何を言い出すんだ、おまえは」
「別に?あんたの顔がちょっと寂しそうだったから、つい何となく、ね」
「ふん、勝手なことを・・」
そう隣にいる妻の髪を撫でて、彼は空を見上げた。
 あれから数十年。母星である惑星ベジータでの苦い記憶は、いまだに彼の心に深い影を落としていた。
忘れもしないあの記憶・・。
「オレの5才の誕生日の日のことだ」
「・・え?」
突然、ベジータが話し出したことにブルマは興味をそそられた。
「オレの故郷が、まだフリーザに滅ぼされていない前、オレはフリーザの元に人質として送還されることになった・・その時、オレの母親が言ったんだ」
「ベジータの母親?」
ベジータは小さくうなずいた。
今ではその顔すらよく覚えていない。
ただ、母親が彼に言った言葉は記憶にとどまっていた。
この時すでに父王と共に前戦で戦っていたとはいえ、まだ戦うには幼すぎるベジータに、母親は言った。
「愛している、と・・」
その時、その言葉の意味は分からなかった。
ただ、いつもは気性の激しいサイヤの后が見せる母親の言葉が、子供心に妙に嬉しかったのは確かだ。
意味は分からなくとも、親子の情などないはずのサイヤ人であるのに自分に見せてくれた母親らしい愛情。
「あんたのお母さんが、そう言ったの?」
ブルマは何か言わなければならないと思い、そう尋ねた。
「そして、こう言った。『必ず迎えに来る』と。いつかフリーザの手から、このオレを奪還してみせると。だからそれまで、どんな屈辱にも耐えろと。サイヤ人の誇りを忘れるなと・・オレはその言葉だけでフリーザ軍で生き抜いてきた。だが・・結局、オレの母も父王もオレを迎えに来ることはなかった。そして、惑星ベジータは滅ぼされた」
 重苦しい雰囲気が二人の間に流れた。
「それ以来、オレは言葉など絶対に信じることはしない。今もそうだ。信じられるのは己だけだと、あの時から繰り返し言い聞かせてきたからな。だから、おまえたち地球人のように言葉でコミュニケーションをとる術を知らん」
「・・そっか」
ブルマはそうつぶやいた。
自分の知らない傷を、ベジータは背負ってきたのだ。
それを知らずに、自分は彼が愛の言葉もささやかない、冷たい男などと・・。
本当は、愛されたいと願う純粋な魂を持つ男なのに。
その男の引き裂かれた心を、自分は理解していなかった。
「あたし、あんたのこと何も分かってなかったのね」
これじゃあ、奥さん失格だわ。ブルマはため息をついた。
「これからは軽々しく『愛している』なんて言わないわ。言葉だけじゃ分からないことだってあるんだし・・あっ」
言い訳がましく苦笑いするブルマを、ベジータはぎゅっと抱き寄せた。
「・・だれも言うなとは言っとらん。貴様の気が済むなら好きなように言えばいい。だが、オレには期待するな」
「分かってる。だって・・」
ブルマの口をベジータの口が塞ぐ。
「言葉にはできんが、行動で示すのがサイヤ人のやり方だからな・・」
ブルマは笑った。
「・・じゃあ、行動で示して。あんたがあたしをどう思っているか・・・」
「よかろう」
そう言うと、ベジータはブルマを抱きしめて倒れた。
宇宙一、純粋な魂を持つ男と彼を見守る妻の物語は、辺境の星地球で、ゆっくりとその物語を紡いでいる。

<完>


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大ファンのしぷれっと様のサイトから強奪してきました!!
ベジータが男前で格好いいですーーー(><)
ベジータにおまえって言われるブルマはとっても幸せですよね!!!
これからもしぷれっと様のSSを楽しみにしております。
たくさん萌えをくださいね!!

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