ここは悩める者たちが集う場所。
"BARカカロット"
筋肉質の大男と小柄な男が、薄暗いカウンターで怪しげな会話をしているようだ。

BARカカロットへようこそ

第三章 地獄から来た天使



「おつとめご苦労だな、ナッパよ」
「いやー、地獄ってのもこれがなかなか楽しいところでして」
ナッパと呼ばれた男は、楽しげに大きな口をあけて笑った。
「女には困らねぇし、戦闘もできる。べジータ様も早く地獄に来たほうがいいですぜ」
ナッパと話をしている小柄な男。
我らがべジータ、惑星べジータの王子だ。
「いずれな・・・」
そのべジータは特製ベジタブルドリンクを飲みながら、壁にかかった額縁を眺め、
ナッパの言葉にあいまいに答えた。
「それにしても、このショボい飲み屋はなんですかね。
べジータ様ともあろうお方がこんなところへ通っているんですかい?」
ナッパはでかい声で無遠慮に言い、今にも壊れそうな壁をバンバンと叩いて豪快に笑った。
「その辺にしとけよ、ナッパ。お前は加減を知らんからな・・・
まぁ、下級戦士のカカロットにはこれが精一杯ということだ・・・」
べジータも口元をキュッと上げてをにやりと笑う。

「おいっ!おめぇら!悪かったな、ショボくてよ。他のお客に迷惑だから出てってくれ!」
カウンターの内側にいる孫悟空は、ナッパをじろりと睨んだ。
「客だぁとー?オレたち以外だぁれーもいねぇじゃねぇか」
ナッパ馬鹿にしたように、薄暗い店内を見回した。

その時

カラン

ドアにかかった黒金色のアンティークな鐘が、上品な音をたて、
小さく開いたドアの隙間から、すらりとした足が覗いた。

「よう!久しぶりじゃねぇか、ブルマ」
孫悟空はブルマと呼ばれた女に近づき、ナッパやべジータとは反対側の席へ案内した。
「ありがと、孫君」

「なに?!ブルマだと」
べジータからはナッパの大きな体が邪魔をしてブルマを見ることができないが、
聞き覚えのある声だ。
「おや、べジータ様、あの女知ってるんですかい?ありゃあ、カカロットの女ですかね。
随分と親しげだ。
それにしてもカカロットのヤロー、上等な女を持ってやがるぜ」
ナッパは親しげに孫悟空と話す、ブルマを舐めるように見た。

今日のブルマのいでたちは、背中から腰まで大胆にカットされたラメ入りのシルバーのドレスで、横からは豊かな胸のラインが僅かにこぼれ、形良く組まれた足は太ももの奥まで見えそうだ。

ナッパは興奮した。
「くそぅ、そそりやがるぜ!あの女、ヤっちまいましょう!
も、もちろんオレはべジータ様の後でいいですから。
下級戦士のカカロットにはもったいねぇ」
「おい、ナッパ」
べジータが止めるのも聞かずに、ナッパはブルマの側に行き隣に座った。
「チ」
べジータは苦い顔をして、ドリンクを一気に飲み干した。


「よーう、カカロットじゃぁ、楽しめねぇだろ。お嬢さんよ」
「お嬢さん?」
ブルマは突然話に割り込んできた、大きな男を見上げた。
はっきりいってブルマの好みのタイプではない。
「なによ、アンタ!邪魔よ。
あたしは孫君と楽しくお喋りをしているの!!あっち行きなさいよ」
「なんだと、このアマ・・・」
ナッパは強い口調で自分を邪険にする、この女に痺れた。
「いい女じゃねぇか・・・
オレが地獄でヤッちまった女なんか、ありゃあクズだった!
ちくしょう、地球にはこんな痺れる女がいたのか!!」
ナッパは悔しそうに大きな独り言を云った。

「いい女?あたしが?・・・あんた、よく判ってるじゃなーい!
全然あたしの好みじゃないけど、一緒に飲むくらいなら許してやるわよ」
ブルマは褒められたことに機嫌を良くし、ナッパに小悪魔的な笑顔を向けた。

べジータからは、ナッパの姿しか見えない。
今の会話でべジータはナッパに対して、ブルマを侮辱されたことを怒るべきだったが、
完全に出るタイミングを逃した。
逃したというよりも、ブルマを試していたのかもしれない。
(フン。ナッパのヤローは後でぶっ殺してやるが、
ブルマが他のヤローにどんな態度をとっているか、よーく観察しておいてやるぜ)

べジータはどっかりと座りなおした。
「おい、いいのかよ、べジータ」
孫悟空が小声で囁く。
「フン。かまわんだろう。オレには関係のないことだ」
孫悟空の手前、心にもないことを言うべジータ。

「なぁに?あんたの星には王子様がいるの?!」
突然、ブルマの甲高い声が店内に響いた。
どうやらナッパが自分の話をしているらしい。
「宇宙一強い男で・・・え?カカロットよりも数倍いい男?!
孫君よりもいい男なら問題ないわ!!今すぐつれてきなさいよ」
ブルマは王子様というキーワードに想像力をたくましくさせ、
大きな瞳はすでに夢の世界を漂っている。
「ああ、あたしの夢だったのよねー!!
素敵な恋人、素敵な王子様!!ロマンチックな恋がしたいわー!!」
ブルマはうっとりと両手を合わせた。


「なるほど、貴様のことがよーくわかったぜ」
浮かれるブルマの後ろから、聞き覚えのある低い声がする。

「べ、べジータ・・・」
ブルマはぎょっとして、べジータを振り返る。
「い、たの?」
「悪いか。・・・フン。
つくづく貴様は下品にできてやがる。なんだその格好は!
まるで男のことしかアタマにないようだぜ」
「なによ!あんたこそ、いるならいるって言えばいいじゃない!!
悪趣味よ、まるで覗きね!!!」
「なに!?」
べジータは眉を吊り上げた。
「べジータ様、この女をご存知でしたかい?・・・ま、まさか・・・」
ナッパは恐る恐るべジータを見る。
「そうさ、ブルマはべジータと結婚ってやつをしてるんだ。
あれ?結婚はしてねぇのか・・・んじゃ、なんて言ったらいいのかなぁ」
孫悟空はべジータの変わりに答える。
「なにぃーー!!べジータ様の女ーーー?!やべぇじゃねぇか、そりゃ。
手ぇ出す前でよかったぜ。
おい、カカロット。オレはもう地獄へ帰るからな。後は勝手にやってくれ!!」
ナッパはべジータとブルマが睨み合っているスキに、勢い良く店を飛び出した。


「なによ、こそこそしちゃって!!あたしのことをまるで信用してないみたいじゃない!!」
ブルマは目の前にあった灰皿をべジータに投げつけたが、軽く払われた。
「信用だと?
勘違いするな。オレは別に貴様のために地球にいるわけじゃない。
オレの目的はこのカカロットを倒して、ナンバーワンになることだけだ!!」
「なんですってー!!」
「おい、べジータ。そりゃ言いすぎだろ」
孫悟空もなだめに入る。
べジータは今にもブルマを殺しそうな形相で、ブルマに詰め寄る。
「なによ!!あたしは悪くないわよ。そんな顔したって怖くないんだから!!」
そう云いながらもブルマは一歩一歩後ずさりをし、壁まで追い詰められると、
孫悟空に助けを求める視線を送った。
「べジータ、やめろ」
孫悟空はカウンターを飛び出し、べジータを抑えつけようとしたが・・・

それよりも早く、べジータがブルマの唇をふさいだ。

ブルマは突然のべジータの行動に、ぱっちりと大きな目を見開いて、
すぐ近くにあるべジータの顔を見た。
孫悟空も飛び出したはいいが、次の行動に出られず動きが止まっている。

べジータはかまわずにブルマの腰を引き、
ドレスからチラリと覗く胸元に手を入れ、柔らかい部分を荒っぽく掴んだ。
ブルマは声こそあげなかったものの、一瞬のうちに電撃に打たれたようにぐったりとし、
べジータに体をあずけた。

「しかしだ、貴様といるもの悪くないと思い始めている。
下品で生意気な女だがな・・・」
べジータはブルマの耳元に自分の唇を寄せ、孫悟空に聞こえないようにイヤらしく囁いた。

「どうせ、貴様はオレなしでは我慢できなくなる」
ブルマは小さくうなずいた。



カウンターの奥で、孫悟空が一人明日の仕込みをしていた。
まだ閉店までに2時間もあるが、もう客はこないだろう。
べジータとブルマはあの後、さっさと店を出て行ってしまった。
あの様子だと、朝までは眠らないかもしれない。
「あいつら、仲いいんだか、悪いんだか、わっかんねーよなぁ。
止めに入ったオラがまるで馬鹿みてぇじゃねーか」
孫悟空には未だに男と女の駆け引きはわからない。

「今日はもう寝っかな・・・」
孫悟空は表の看板の明かりを消した。

恋や、金や、戦いや・・・いろんな悩みを持った者達が集まる場所。
”BARカカロット”
365日年中無休、深夜5時までの営業です。

今日もマスターカカロットこと孫悟空が、あなたの悩みをやさしく聞いちゃいます。
またのご来店お待ちしております。





あとがき
地獄の天使はナッパです(><)
ベジとブルマを熱々にして地獄へ帰っていきましたから。

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