ここは悩める者たちが集う場所。
"BARカカロット"
開店したばかりの店内に、いつもとは違う、緊張した空気がピーンと張り詰めている。

BARカカロットへようこそ

第五章 惑星べジータの戦士



「カカロット。お前は誇り高いサイヤ人の戦士なんだぞ」
BARカカロットのマスターこと孫悟空と、一人の男が向かい合っている。

「オラはここがスキなんだ!おめぇなんか知らねぇ!!」
いつもは穏やかな孫悟空が、珍しく額に脂汗をにじませていた。

孫悟空ともう一人の男の容貌はそっくりだった。
髪型から体格、声もたいして変わりはない。
ただ、目つきの鋭さと左の頬の傷だけが違っていた。


男の名は、バーダック。

孫悟空の父親である。

その父親が、べジータと一緒にこのバーへ来たのだった。

孫悟空は赤ん坊の時に、地球に送られてきたので父親の記憶はない。
「オラに父ちゃんはいねぇ!さっさと帰ぇれ!!」
「カカロット・・・地久という辺境の星に来て、サイヤ人の誇りを失ったか?」
「そんなのオラには関係ねぇさ」
「こんな辺境の星など捨てて、オレと新しいサイヤ人の星を創るんだ」
「断る!それに、惑星べジータを復活させるなら、べジータとやりゃあいいじゃねぇか。
王子様なんだろ、べジータは」
孫悟空は、2人のやり取りを面白そうに見ていたべジータに視線を向けた。

「フン。貴様が行くなら、オレも行くさ。そして今度こそ決着をつけてやる」
「ブルマは・・・トランクスはどうするんだ?!」
「来たけりゃ、つれていくまでだ。
・・・もっともブルマは地球がお気に入りらしいからな。
瞬間移動装置でも開発して、好きなように行き来するだろうさ・・・」
「なるほどな、ブルマならやりそうだ・・・
だけどよぉ、オラ惑星べジータとか、サイヤ人の星とか興味ねぇし」
孫悟空はべジータに向かって困った顔を見せた。

「カカロット。
お前はオレと一緒に戦うんだ。お前はあのフリーザを倒したんだろう?
べジータ様から聞いたぞ」
「いや、正確に言えば、べジータの息子のトランクスってやつが倒したんだ」

「オレとべジータ様と、貴様とでオレ達の新しい惑星べジータを創る」

「勝手に決めるな!!!
だいたい、そんなもの創ってどうするってんだ」
「教えてやろうか」
べジータがバーダックの変わりに答える。
「強い奴と戦うためだ。
貴様もヤードラットに行ったのならうすうす感づいてはいるだろう。
宇宙は広い。フリーザなんかより強い奴はまだまだいるぞ・・・魔人ブウよりもだ」
「!!!」
孫悟空の表情がわずかに変わった。
「どうだ、ワクワクしてきただろう」

「貴様はより強い奴と戦うため、
バーダックはサイヤ人と、サイヤ人の星を創るため、
そしてオレは・・・」
べジータはニヤリと口元を歪ませた。

「貴様を倒し、再びナンバーワンになるためだ」

「なるほどな・・・
地球じゃ思いっきり戦えねぇしな。

だけど・・・オラ、やっぱ地球がいい」

孫悟空は少し残念そうにうつむいた。

「フン。貴様はそう云うと思っていた。
オレの云った通りだろう?バーダック」
べジータはカウンターに片肘をのせ、バーダックと孫悟空を交互に見た。
「べジータ様・・・
わかりました。今日のところは帰ります」
バーダックは出入り口の扉に手をかけた。

「バーダック!!
オラ、おめえのこと父ちゃんとは思ってねぇけど、同じサイヤ人の誇りをもった仲間だ!!
またこの店に来てくれよ!」
孫悟空はバーダックにうかって、親指を立て合図を送った。

それを受けたバーダックは、口元を僅かにゆがませ、そして去っていった。


「なぁ、なんであいつををつれてきたんだよ。
おめぇだって本気で地球を出て行こうなんて思ってなかったんだろ?
なんだかんだ言ったってよぉ、ブルマがそんなとこに行くわけねぇし、
瞬間移動装置の開発だって、そう簡単じゃねぇはずだ」

孫悟空は二つのグラスにキャロットジュースを注ぎ、ひとつをべジータに差し出した。
そして、もうひとつのグラスを自分で飲み干した。

「さあ、どうだかな・・・」
べジータもチラリと孫悟空に視線をやると、そのジュースを飲み干した。

「もう一杯やっか?
オラも今日は飲みたい気分だ。たまにはおめぇと飲むのもいいだろ」
「フン・・・スキにしろ」

しんみりとした空気がBARカカロットに流れる。
2人は会話をほとんどしなかったが、
同じ時空気を共有することで満足しているようだった。




恋や、金や、戦いや・・・いろんな悩みを持った者達が集まる場所。
”BARカカロット”
365日年中無休、深夜5時までの営業です。

今日もマスターカカロットこと孫悟空が、あなたの悩みをやさしく聞いちゃいます。
またのご来店をお待ちしております。





あとがき
書く書くと掲示板で言っていたバーダック編が、ようやっと出来ましたーー。
本当はバーダックって、もっとかっこいい役回りなんだけど
ベジを出しちゃったから、普通の人になってしまいました(泣)
ここは、ベジブル、トラブルのサイトなんですが、今回は例外。

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