同じ女を求めること

第一話 殺意


「トランクス・・・?」

さらさらとブルマの皮膚をくすぐる、トランクスの柔らかな髪が気持ち良い・・・
ブルマはいつもの癖で、自分の胸に顔を埋める男の頭を、優しく撫でようとした。
が・・・自分の息子だということに気づき、急に息苦しさを感じてトランクスを突き放す。

「あ、あんた・・・なんか変よ・・・」
ブルマは、トランクスに吸われ、赤みを増した胸の上に手をやり、一歩後ずさった。
「変・・・ですか。
そうですよね・・・自分の母親なのに・・・
自分の母親を異性として意識しているオレは、変ですよね・・・」
「でも、苦しいんです・・・あなたが、父さんと・・・その・・・
そういう事をしているのかと思うと」
トランクスは、ブルマの薄いガウンの前をはだけ、あらわになった白い胸に、再び口付けをした。

べジータによってつけられた赤い斑点に沿って、
トランクスは、一つ一つ触れるか触れないかくらいで唇を押し付けていく。
トランクスの切ない息遣いと、皮膚をチュッと吸う音がブルマの心をくすぐった。
そして、唇が触れたその部分から、トロトロと、ブルマの中の何かが溶けていく。

(この優しく揺さぶれるような感覚に流されたら、あたしは一体どうなるのかしら?)
ブルマはトランクスの愛撫を黙って受け入れた。
と、いうよりも、この心地よさを手放したくなかっただけなのかもしれないが。

「母さん・・・あなたが愛おしい」
トランクスはブルマの様子を伺いながら、少しずつリビングテーブルにブルマの身体を倒していく。
完全にブルマの背がテーブルについたとき、トランクスはブルマのサーモンピンクに染まった敏感な部分を口に含み、柔らかく吸いあげた。

「んっ・・・!」
ブルマの身体がピクンと動く。

トランクスは今まで抑えていたものを一気に放出させるように、激しくブルマの身体を愛撫しはじめた。

いつの間にか、トランクスの上半身はブルマの上に覆いかぶさっている。

(やだ、どうしよう・・・あたし、この男を拒めない・・・)
トランクスはブルマの気持ちを見透かすように、蒼い眼を近づけ、そして静かに唇を重ねた。

「しても・・・いいですか・・・?」
トランクスはブルマから唇を離すと、朱に染まった頬を親指で擦った。




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トランクスは結局、一睡もすることができなかった。

今朝、偶然にもブルマと出くわし、キス以上のことをした。
しかしトランクスの欲望は、まだ身体の中で、ぐずぐずとくすぶったままだ。

(オレは臆病なんだろうか)
トランクスは自分に問いかける。

ブルマの表情には迷いがあった。

もし、抱いてしまったら、自分は父親のべジータに負けたことになるような気がして、抱くのをやめた。
(でもそれは言い訳かもしれない。
結局、父さんと比べられるのが怖かっただけなんじゃないか・・・
母さんが最後に選ぶのは・・・やっぱり父さんだから)


トランクスは寝不足でだるくなった身体を起こし、冷たい水で顔を洗った。
7時になったら、朝食の知らせの内線が入るだろう。



ブルマはリビングでべジータの朝食に付き合い、コーヒーを啜っていた。
べジータはトレーニングのため、皆よりも早い朝食をとる。
「トランクスが来てるときくらい、一緒にご飯を食べればいいじゃない」
「あいつをたたき起こせ。せっかくだから稽古をつけてやる」
「自分で呼びに行きなさいよ・・・・・・ふぁ〜。あたしもう一回寝よっと・・・」
ブルマは大きなあくびをし、席を立つ。
その時、胸のあたりが大きく開き、赤く内出血した部分がチラリと見えた。

べジータは何気なく視線をやったが、ブルマはとっさにそれを隠し、そそくさと出て行こうとした。
「?」
べジータは昨晩に自分がつけた赤い印だと思ったが、それにしては血の色が濃すぎる。
しゅっちゅう痕を残してはブルマに文句を言われているので、強くはつけていないはずだった。
「ブルマ、オレは加減をしたつもりだったが・・・?」
べジータはブルマの隠した胸をぱっと開き、その部分を凝視した。

「・・・ブルマ。貴様が他の男と寝ようが、オレには関係のないことだが・・・
もし、その相手がトランクスなら、オレは容赦なくあいつを叩きのめすぞ」
ブルマの表情が引きつった。
「・・・そうか。やっぱりあいつか」
べジータは食べかけの食事を、テーブルごと勢いよくひっくり返した。
「違うの!べジータ!!」
しかし、べジータの耳にはブルマの声は届かなかった。


べジータは、トランクスの部屋のドアを木っ端微塵に吹っ飛ばすと、
驚いた顔で自分を見る、トランクスのみぞおちに重い一発をくらわせた。

「ぐはっ!!!」
トランクスは腹を抱え、くの字に折れ曲がる。

「貴様、ブルマに何をしやがった!」
べジータは、容赦なくトランクスを殴りつけた。
トランクスは痛みを堪えながら、べジータを見上げる。

「何をって・・・」
べジータの目は怒りで大きく見開かれている。
「とぼけるな!
・・・・・・オレが何も知らないと思っているのか?
もう一度だけ聞くぞ。ブルマに何をしやがった」
「聞いてどうするんですか?それであなたは・・・オレを殺すのですか?」
「場合によってはな」

トランクスは、べジータの問いかけに素直に答える気がなかった。
自分はブルマのことで、既にべジータに負けている。
何もしていないといえば、べジータはさっさと引き上げていくだろうが、
トランクスは自分の中にくすぶっているものを発散させたかった。

「・・・・・・」
トランクスはべジータに挑発的な視線をやると、口元に微笑を含ませた。

「・・・母さんは可愛かった」
「・・・・!!」
「この腕の中で、何度もオレの名前を呼ぶんですよ。だからオレもそれに答えた」
「貴様っ・・・」
「勝気な母さんが、あんな顔をするとは思わなかった・・・
・・・あなたはいつも、それを独り占めしていたんですね。
たまにはいいでしょう?
他の男に・・・自分の息子にブルマを譲るくらい」

ブルマ、という言葉を丁寧に舌の上にのせて発音し、そして決定的な言葉を付け加えた。

「あの人はオレにこう言った。
・・・・・・・・・・・
トランクス、愛しているわ・・・・・・ってね」



べジータの大きく見開かれた目はスッと細くなり、荒々しく放出されていたオーラは、冷たく刺々しいものに変わっていった。
胸の辺りで組まれていた腕もほどかれ、今は軽く拳が握られている。
トランクスの部屋の空気がピンと張り詰めていき、静かに均衡を保っているようだった。

殺気だ。

べジータは人造人間のときの戦いでも見せなかった殺意を、トランクスに抱いている。
トランクスの体にゾクリとしたものが突き抜け、背中に冷たいものが流れた。


(父さんが、オレに嫉妬をしている)
プライドの塊のようなべジータに、殺意を抱かせるほどの嫉妬を与えられる男は、そういないだろう。
べジータがトランクスを脅威だと思っていることの証明は、トランクスを体の芯から喜ばせた。

(それなら、オレも正面から父さんと勝負をしてみたい)
この場合の勝負とは、もちろんブルマのことである。
トランクスの生き生きとした様子に、べジータはいぶかしげに僅かに首をひねった。

「これから殺されようというときに、何を笑ってやがる」
べジータは、トランクスの力は自分と同等だが、戦闘のセンスは遙かに自分のほうが上だと感じている。
トランクスもそれはわかっているはずだ。
それなのに、この余裕の笑みは一体・・・

「冗談ですよ・・・・母さんを抱いたというのは。
父さんがこれほどオレに嫉妬をすると思わなかった・・・
正直、嬉しいです」
「・・・?」
べジータは疑いの目を向けている。

「父さんはオレがライバルだと認めてくれているんですね・・・
それならオレは堂々と、あなたから母さんを奪うことができます」
「なんだと?」
「選ぶのは母さんです。
オレが触れたとき、あの人は迷っていましたから・・・」

「何を寝ぼけたことを言ってやがる・・・・。アタマがおかしくなったんじゃないのか」
べジータは急に馬鹿馬鹿しくなり、いつものように腕を組みなおした。

「言っておきますが、オレがあの人と結ばれることになっても、もう歴史は変わりませんよ。
小さなオレも生まれているし、セルも倒した。
こちらではオレは存在しないことになっていますが、それは地球人ではないあなたも同じでしょう」

「バカが・・・・・・!」
べジータは心底あきれたように、トランクスを見た。

おおかた、ブルマが死ぬまではこの世界にとどまり、
その後はタイムマシンでやってきたときと同じ時間へ戻るつもりなのだろう。
または、その逆か・・・


どちらにしても、べジータにとって、トランクスの心情は理解しがたいことであり、
あまりの愚かさに言葉もでない。
ここにいるトランクスが、ブルマに手を出すことは時間の問題だろう。


もっとも、べジータにとってブルマは、口には出さないが何よりも大切だと思える存在になっている。
ブルマが誰と何をしようと、それを受け入れ許すことはできるだろうが、トランクスだけは別だ。
自分の分身ともいえる、このトランクスだけは・・・


べジータはトランクスにピタリと視線を合わせると、
自分に似た、鋭い眼をもつこの男の挑戦を受けるとでもいうように言った。



「勝手にしろ」


べジータは破壊したドアの瓦礫を踏みつけ、トランクスの部屋を後にした。


続く


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あとがき
ベジ、トラの挑戦を受けちゃいました。
次回は「言葉」です。
よろしければ、読みにきてください。

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