00-3

「さあて、べジータはくるかしらね」
ブルマは真っ白なドレスに、清楚なマリアベールを被り、ホテルに設置されているスタジオでウロウロと歩き回っていた。
教会でもなく式場でもないホテル内にある撮影スタジオで、ウェディングドレスを着て相手役の王子様を待っている自分は、まるで雑誌のモデルか何かの仕事をしているような事務的な感じがする。チチが知ったらまたお小言を言われるかもしれない。

そういえば、ブルマは雑誌のモデルのようなことを頼まれてやったことがある。
読者モデルと言えばいいだろうか。ノーギャラだがブルマにとってもC.Cの宣伝になるので、その時はモデルの話を受けた。
グレーのグラデーションの大きな布の上に立ち、不自然なポーズをつけ可笑しくもないのに笑う。
いくつもの照明やレフ板がまぶしいせいもあり、カメラのレンズと自分以外の世界は全てシャットアウトされる。
ブルマはその瞬間があまりスキではないと思い、それっきりカメラの前に立つことはなかった。

しかし今日は、べジータとの記念の一枚を残す気でいるので、ブルマは鏡に映った自分の全身をくいいるようにチェックし始めた。
(うん、とっても魅力的じゃないの)
ブルマは自分の姿に満足した。あとは隣にべジータがいれば完璧だろう。
しかし、そのべジータは全く姿を見せる気配がなく、ブルマは少し不安になってきた。
(やっぱり、ダメだったかしら)

ブルマがスケッチブックに書きつづっていた、べジータを誘い込むための作戦はというと・・・。

第一案として、強引にべジータを誘いこの場所に連れてきて、カプセルに入った衣装を装着させる。
これは実際のところ、まったく話にならなかった。
強引にといってもブルマが力ずくでべジータを連れてこられる訳はない。かといって、(べジータにとって)くだらないお願いごとを聞いてくれるような男でもなかったので失敗に終わった。

第二案は、たくさんのご馳走を餌にここへ誘い込むこと。
さすがにC.Cで毎日美味しいものをたらふく食べているせいか、わざわざ出向いていく必要はないとの返事だった。
これも失敗。

最後は、ブルマのお得意なお色気作戦だ。
結局この案を採用することにした。
ブルマはあの作戦(?)を練った日からべジータと肌を合わせていなかった。
ブルマから仕掛けなければ、べジータは自分から進んでブルマを抱いたりはしない。といっても、ほぼ毎日ふたりは肌を合わせていたのだから、ここ数日していないだけで、べジータはブルマという餌に喰らいつく率が高くなるというものだ。
ブルマは孫悟空が自分の写真を撮りたいというから、逢いに行ってくるけど、べジータも来る?と言い残して出かけた。
ブルマがC.Cを出たときの格好は、べジータの赤面するような、背中までバックリ開いたミニのワンピースだ。
孫悟空がブルマのプリプリの写真を撮ることを、べジータは妨害しにくるだろうと予想している。
実際、孫悟空には、ここに来てもらっていたし、実際に写真を撮らせるつもりだ。
(べジータは気が読めるからね、孫君を呼んじゃえば絶対来るはずだわ!)

しかし
半日が過ぎても、べジータはやってこない。
ブルマは待ちくたびれてしまった。
(もういいわよ。すごーくエッチな写真を孫くんに撮ってもらちゃうんだから!べジータが悪いのよ!)
ブルマはご馳走をたらふく食べ、ソファ食後の睡眠をとっている孫悟空をつついた。
「孫くん、孫くんってば!起きなさいよ、あたしのプリプリな写真撮りたいんでしょ?」
「・・・」
反応はない。
「孫くーん!ご飯の時間よー!!・・・」
しかしお腹がいっぱいの孫悟空は、むにゃむにゃ言うばかりで起きる気配がない。

「もう!これだからサイヤ人は!」
ブルマは手を腰に当てると、孫悟空に軽く蹴りを入れた。

時間をもてあましたブルマはホテル内のカジノに向かった。
ヤムチャと付き合っている時は、喧嘩をするだびに一人でここへ来たものだが、べジータがC.Cに来てからは一度も足を運んでいない。

今日はいつものカジノフロアには行かずに、一般客が遊ぶフロアへ行くことにした。
長いドレスを両手でつまみ、ズカズカと歩くブルマは目だっていたかもしれない。
しかし途中ですれ違う宿泊客達は、ブルマのウェディング姿を見るとおめでとう!と声をかけてきた。
ブルマはにこやかにお礼を云いながら、内心はイライラとしてきた。
(なーにが、おめでとうよ。花嫁が一人でいるのよ、おかしいと思わないのかしら?!)

ブルマはどのテーブルにしようかとしばらく歩き回っていたが、昔なじみの仲の良いディーラーを見つけると、そのルーレットテーブルについた。
テーブルの上の小さなパネルには「ミニマムベット1000ゼニー」と書かれている。
いつもより少し安めだが、今日はちょうどいい金額だろう。

「久しぶりねー!元気だった?」
ブルマは何年かぶりに会うディーラーに声をかけた。
「ブルマさん!今までどこへ行ってたんですか?顔をみせないからどうしたのかと思ってましたよ。それにしても、その格好はウェディングドレスじゃありませんか?」
「そーよ。でも結婚するわけじゃないわよ。だからといって理由は聞いちゃダメよー」
ブルマはムっとした表情をくつくり、30万ゼニーを色チップに換え、奇数と黒と7番に5枚づつチップを置いた。

円盤の中をコロコロと回っているボールを、ブルマはじっと見つめていた。
(あたしがルーレットで勝てばべジータは来る。負ければべジータは来ない)

さあ、勝負よ!

しかしボールは赤の6番で止まった。
「ブルマさんが負けるなんて珍しいですねー」
ディーラーはチップを回収しながらブルマを見た。
「ホントよね!運だけは誰にも負けないはずのあたしが!」
ブルマは少し驚き、そしてがっくりと肩を落とした。
べジータはやっぱり来ないかも・・・ブルマは小さくため息をついた。

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C.Cではべジータが不機嫌そうに、ブルマのママから受け取った妙な服を着ていた。
ブルマはカカロットに自分の写真撮らせてあげると云い、今朝方家を出て行った。
しかもべジータが下品きわまりないと思うような格好で!
べジータが気を探ると、確かにカカロットと一緒にはいるらしいことがわかった。

しかし・・・
べジータは素直には行く気がしなかった。それは最近ブルマの様子がおかしかったからだ。
こういう時のブルマは大抵くだらないことを考えていて、べジータをそのくだらないことに巻き込もうとしている。
カカロットの写真の件は心配だったが、わざわざブルマにハメられにいくのも馬鹿馬鹿しい。
べジータは後でカカロットから写真を取り上げればよいと判断し、いつものようにトレーニングをしていたが、ブルマのママに捕まった。
「あらー?べジータちゃん、まだいらしたの?ブルマさんはとっくに出かけたわよー」
「邪魔をするな」
べジータはブルマの母親を無視しトレーニングを続けている。
ブルマの母親は笑顔で重力装置のスイッチを切ると、食事ができたからすぐにリビングに来てねと言い残し、去っていった。
トレーニングを中断されたべジータは面白くない。
「チッ。娘と同じ行動をしやがって」
それでも食事と聞くと、べジータは仏頂面のままリビングへと向かった。

「はい、べジータちゃんのお洋服よー」
ブルマの母親はニコニコとして、べジータに黒い妙な服を差し出した。
トランクスに頼まれ発注していた、黒いタキシードだ。
「なんだこれは」
「きっとべジータちゃんに似合うと思うわー」
「そうだよ、パパ。着てみてよ」
先に食事をしていたトランクスも、それに同意をする。
(こいつら、ブルマとグルか)
べジータはプイッとブルマの母親の横を通り過ぎると、テーブルについた。
「べジータちゃんのご飯は、ブルマさんが用意してあるんじゃないかしらー?」
「?」
「おとうさんの分をボクが食べちゃったんだ」
トランクスは台本を読むような棒読みでわざとらしく云った。
「ブルマは何をたくらんでやがる、トランクス!」
べジータはギロリと息子を睨んだ。
「し、知らないよ、ボク」
「べジータちゃん、ちょっといらっしゃいな」
いらっしゃいと云いながら、ブルマの母親はべジータに近づくと白いシャツをフワリと羽織らせた。
「べジータちゃん、ここに袖を通してちょうだいな」
ブルマの母親はにこやかに、しかしあっという間にべジータにシャツを着せてしまった。
べジータに抗議する間もあたえない鮮やかな手口。
「まぁまぁまぁ!べジータちゃん素敵ねぇー。これからママとデートしましょ」
「おばあちゃんがおとうさんとデート?!ママが待ってるよ」
「待っているだと?ブルマはカカロットの奴と用があると言って出かけたはずだ」
べジータはトランクスに詰め寄った。
「ブルマの目的はなんだ?トランクス、言わんと遊園地は連れて行ってやらんぞ」
「ええ?!ずるいよおとうさん。ボク、関係ないじゃないか」
トランクスは祖母に助けを求める視線を投げた。
「じゃあね、ママが教えてあげるから、このお洋服もちゃんと着てちょうだい」
ブルマの母親はタキシードの上下をべジータに手渡した。
「チッ」
べジータは顔をしかめて訳がわからないといった表情を作りながらも、その場で着替え始めた。
トランクスは感心したような、尊敬したような目で祖母を見あげた。
(すごいや、おばあちゃんは・・・あのパパがおとなしく着替えてるよ。ママじゃ、こうはいかないだろうな)

「フン。これでいいんだろうが」
べジータのタキシード姿は思ったより悪くはなかった。と、いうより窮屈そうではあるが割りと似合っている。
「へぇー、おとうさんカッコいいや」
トランクスも父親の普段は見られない格好を目の当たりにし、嬉しそうにしている。
べジータは苦虫をつぶしたような顔で、息子をジロリと見た。
「おい、それでブルマは何を貴様らに吹き込んだ?まぁ、大抵察しはつくがな。この妙な格好はブルマの部屋にあった冊子に落書きしていたものだろう。
一瞬だったがべジータはスケッチブックを見ていたのだった。


続く


あとがき
ね、眠い。これ以上は眠くて書けません(><)
また次回に・・・。

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