蒼い狂気 3

「じゃ、オレにつかまってください。」
トランクスは手を差し出した。
「え?ジェットフライヤーじゃないの?」
ブルマはジェットフライヤーでいくものだと思っていた。
「それじゃ時間がかかりすぎます。一日にやらなければいけないことは山ほどあるんです」
トランクスは当然というように言うと、ブルマの腰を自分に引き寄せた。ブルマも自然にトランクスの首に手をまわす。
「しっかりつかまっててくださいね。」


トランクスが着いた場所は郊外にある小さな研究所だった。
研究所には20人くらいのスタッフが地球の再生のために働いていた。
そのうちの約半数が、平和な時代にC.Cで働いていたスタッフ達だったが、トランクスのように平和な時代の記憶がない世代もちらほらと混じっている。
「よぉ!トランクス!」
「おはよーさん、トランクス」
「おはようございます」
トランクスが部屋に入ると、何人かの人が集まってきた。
「おいっ!その人はお前の姉さんか?」
「ブルマ博士の若いときにそっくりだもんな!」
「いえ、姉さんではありません。」
「じゃ、恋人か?!やっぱおめぇはスゲー奴だなぁ!こーんな美人さんと仲良くやるなんてよ!」
いつのまにか全員集まってきていた。トランクスの恋人というのに興味があるようだ。
「違うわよ!あたしはこの子の・・・むぐっ!」
トランクスは慌ててブルマの口を手でふさいだ。皆は何事かと思って見ている。
「この人はオレの大切な人なんです。それに優秀な科学者ですよ。しばらく手伝いにきてもらいました」
「そ、そうか。じゃ、たのむな。彼女の名前は?」
「あたしはブルマ。この子の母さんと同じ名前よ」
ブルマは腰に手をあてて答えた。
「へぇー・・・・・・」
スタッフ達は微妙な顔をして仕事に戻っていった。

「今は病院で使えるようなマシンを開発しているんです」
トランクスは簡単に説明した。
「メディカルマシーンのこと?地球人用のマシンを開発するの?」
「はい。母さんが試作を作ったので、試運転でデータを取り調整しています。本当は母さんがやったほうが確実で早いのですが、まだまだ必要なものがたくさんあって、ひとつのものにかかわっていられないのです。母さんはじっくり取り組むのが好きなので嫌がっているんですが、そうもいかなくて。」
トランクスはコンピューターのデータをブルマに見せた。
「ふん、ふん。なるほど。」
ブルマはキーをパチパチと叩くと、データに目を通し始めた。
「この調整をしたのは誰?C.Cの研究員でもいるの?」
ブルマは画面から目を離すことなくトランクスに問いかけた。
「あ、この中の都にはいませんから、オレが・・・」
「ふーん、あんたなかなかやるじゃない。ただの戦闘マニアのサイヤ人とは違うのね。そういえば、悟飯君も学者になるって頑張ってるみたいだし、2代目は頭の出来もいいのかしらね」
「ど、どうも・・・」
(せ、戦闘マニア・・・父さんも孫悟空さんも母さん達には苦労してんのかな)トランクスは無茶苦茶に言われている父を不憫に思ったが、会話を続けることでもなく真剣にキーボードを叩き続けるブルマの後ろ姿を見て、トランクスはそっとその場を離れた。

コーヒーの香ばしい匂いが研究室に漂っている。
ブルマはハッと、画面から顔を上げると横にはコーヒーカップを持ったトランクスが立っていた。
「どうぞ。ブラックでしたよね?」
トランクスは近くの椅子に腰をかけ、自分もコーヒーを啜りだした。
「ありがとう、トランクス」
ブルマはコーヒーカップを口に運び、目を閉じて香ばしい香りを楽しんでいる。

「・・・今何時かしら?」ブルマはふと気がついたように言った。
「もう夜中の1時ですよ。相変わらずものすごい集中力ですね」
「あっ。そんな時間なの?あっちのブルマに連絡しないと心配してるわよね」
「母さんの方から連絡があって、ブルマは一旦集中しちゃうと朝までやり続けるから、終わるまで帰ってこないんじゃないかって言ってましたよ」
「わかってるわねー。はぁー・・・それにしても、コーヒー飲んだらお腹すいてきたわー」
「朝から何も食べてませんからね。オムレツでよければ、オレ作りますけど」
「え?!あんた料理なんてできるの?」
「料理ってほどじゃないですが、悟飯さんのところにはお手伝いロボットがいなかったので、オレがたまに作ってました」
「へぇー。・・・すっごいわね。・・・あたし料理なんかしたことないわよ。ママはケーキ作りが趣味だったけど、あたしはメカをいじってるほうが楽しかったもん」
「ははっ。母さんもそうですよ。普段はあまり料理をしない人です」
「息子にそんなこといわれちゃうと、ちょっとショックだわー!」
「そんなことないですよ。オレは母さんを尊敬しています。それに・・・」
トランクスはチラッとブルマを見ると
「母さんの入れるコーヒーは最高に美味しい」口角をちょっと上げ、またコーヒーを啜った。
「・・・あんた、冗談なんか言えるようになったのね・・・。まぁ、あんまり面白くはないけどさ」
ブルマとトランクスは一瞬視線を合わせ、そして笑った。
「じゃ、少し待っていてください。」
トランクスは立ち上がった。
「そこまで言われちゃ、あたしが自分で作るわよ。キッチンどこ?」
「でも、さっき料理なんて作ったことないって・・・結構オムレツって難しいんですよ」
「大丈夫よ。卵を焼くだけじゃないの」
「・・・そうですけど・・・」

トランクスはブルマをキッチンに案内し、卵を4,5個持ってきた。
ブルマはボールに次々と卵を割り、それをフライパンに落とそうとする。
「あ!ダメです。油引かないと!」トランクスは慌ててフライパンを取り上げると、手馴れた手つきでオムレツを作り出した。
ブルマは隣でそれを見ている。
「ま、まぁいいけどね。どうせなら美味しく作ってちょうだい」
ブルマはちょっと不機嫌になり、小さなテーブルにどっかりと腰をおろして、頬杖をついた。
トランクスは首だけブルマに向けると、作り方の手順を説明しながら仕上げていく。
その様子を見ながら、ブルマはそんなトランクスもなかなか素敵だと思った。
「さ、できましたよ」
トランクスはブルマの前に美味しそうな匂いを漂わせたオムレツを差し出した。
「ありがとう。じゃ、いただくわ」
ふっくらとした黄色い卵にフォークを入れると、白い湯気が立った。熱々のオムレツを口に運ぶと、半熟の卵が舌の上でふんわりと溶けていくようでとても美味しい。
トランクスは期待のこもった目でじっとブルマを見つめている。あきらかに美味しいと言われるのを待っているのがわかるのが可愛い。
ブルマはちょっと意地悪をしたくなった。
「しょ、しょっぱーい!あんた塩入れすぎじゃないの?!」ブルマはわざとらしく、側にあった水を飲んだ。
「え?!そんな・・・?!」トランクスはビックリしたように、ブルマの食べかけのオムレツの端っこを味見した。
それを見たブルマは喉の奥で笑うといたずらっぽく、ウソよ美味しいわ。と言ってトランクスの背中を叩いた。

トランクスはこんな楽しい時間があることを知らなかった。
一日中ブルマの側にいて、くだらない話をするだけなのに、楽しい。
屈託なく笑う若いブルマは、写真の中と同じ顔をしていた。
何度も夢見た、ブルマの隣にいる自分。トランクスはささやかだけど、心が満たされていくのがわかった。

「ところでさ、あんた、なんかあったの?」
「え?」
「ブルマがあたしにね、トランクスを救ってって言ってたの。それ、どういう意味?あっちのあたしに言いづらいことでもあるのかしら?」
母親は、トランクスが若いブルマに想いを寄せていることを知っている。
そしてトランクスも、ブルマへのやりきれない想いを持て余していている事を、母親が感づいていると思っていた。
「母さんが、そんなことを?」
トランクスは混乱していた。
息子を救ってくれと、若いブルマに頼んだ母親の意図がおぼろげながら解ってしまったからだ。
(母さん、オレが地獄にいくのを後押しするつもりですか?)
トランクスが救われる方法はひとつしかない。
ブルマを自分のものにすることだ。

トランクスも、ブルマが未来の世界へ来た時から何事もなく過去へ返す自信はなかった。
それでも・・・半分はどうにもならないことだと諦めていた。
あたりまえだ。
いくら自分とそう年がかわらなくても、次元の違うとはいえ自分の母親だ。
(オレはどうかしている。そして母さんも・・・)

ブルマは突然黙りこんで、思いつめた顔をするトランクスを心配そうに覗きこんだ。
「ブルマさん。オレ・・・」
ただならぬトランクスの様子に、ブルマは次の言葉をじっと待っている。
「オレは・・・あなたが好きなんです。」
トランクスはブルマをチラと見たが、特に反応はない。そんなこと解っているといった表情だ。
あわてて、言葉を付け加えた。
「あなたをひとりの女性として、好きになってしまったんです」
さっとブルマの顎を引くと、何か言いたげな小さな唇のすき間に、自分の舌を滑り込ませた。

ブルマは驚きを隠せなかった。
自分の舌に、トランクスの舌が絡み付いてくる。
まるで何かの生き物のように、自分の口の中を熱く踊る。
一瞬、頭の中心に抜けるような痺れを感じて、硬く目を閉じた。
(あたし、何やってんの?)心はブレーキをかけようとしていた。
でも、自分の舌は、もっと、もっとと、トランクスの熱い舌を求めて動く。
(これは、ヤムチャやべジータのキスとは意味が違うのよ・・・でも・・・麻薬を打たれたらこんな感じになるのかしら・・・)
さらに深く、深く、落ちていきたいという欲望の炎が燃え上がった。

トランクスは驚きから快感へ変わっていく、ブルマの表情を確認すると少しほっとしていた。
ブルマに拒絶されるんじゃないかと思っていたからだ。
(オレを受け入れてくれる気なんだろうか?)
ブルマはトランクスに答えるように舌を絡ませてくる。いつのまにか、ブルマの腕が首に回されていた。
トランクスはブルマを抱き上げると、側にあったソファに横たわらせ、自分の上着を脱いだ。

鍛え抜かれた鋼のような筋肉がバランスよくついている。
無駄のない美しい身体。
ブルマはまぶしそうにトランクスを仰ぎ見た。
トランクスの顔が近づいてくる。
前に逢ったときよりも精悍な顔つきになった。頬のあたりに残っていた少年っぽさは、もうない。
すっきりした顎のラインと、少し細めて自分を見つめる蒼い瞳が、大人への成長を物語っていた。
本当にいい男になったと思った。
自分とそう年の変わらないトランクス。この男にこれから自分は抱かれるのだろうか?
怖い。
自分達はどうなってしまうのだろう。全く想像もできない世界へ足を踏み入れることは、恐怖以外のなにものでもない。それでも、この男がどういう顔をして自分を抱くのかと思うと、その好奇心に多分あたしは勝てないだろう。
(あたしはべジータがいうように、下品な女なのかしら?)

トランクスがゆっくりと体重をかけてきた。
心臓がはちきれそうにドクンドクンと波打つ。
(今ならまだ戻ることができるんだわ)
トランクスは熱を帯びた眼差しを向けている。ブルマはトランクスの顔を正視することができず、思わず横を向いた。
「あなたが父を、べジータさんをどんなに想っているかは解っています。でも、オレも・・・あなたをずっと見てきたんです。どうしようもないんです。オレは、どうしたらいいのか解らない・・・」
トランクスの瞳からふっと力が抜け、そして、寂しそうに・・・笑った。
(あたしは・・・この眼は・・・ダメだ。反則よ)
「こっちにいる間だけ・・・オレだけを見てくれませんか。オレを一人の男として見てくれませんか。」
「それで・・・オレは救われます・・・」
(トランクスが救われる。それでトランクスが救われるのかしら。本当に?)

ブルマはトランクスの誠実な罠に気づかない。
トランクスを救うために身体を許した、という言い訳は彼女を傷つけることなく、トランクスの思うように出来る。

ブルマは答えない。トランクスはそれを合意ととった。

トランクスはブルマの首筋に沿って、唇を這わせた。そして、ところどころに赤い刻印を残していく。なれた手つきでジャケットのボタンを外し、蛍光灯に照らされて、白く光る胸に顔をうずめた。
「明るすぎるわ・・・」
「暗いとあなたの顔が見えません」
「でも・・・」
トランクスは上半身を起こし、蛍光灯に向けて小さく気を放った。

パンっ!という鋭い音とともに辺りは暗闇に包まれ、研究室からもれる光だけが2人を照らした。

トランクスは、ブルマの唇を薄く自分の唇でなぞり、舌で中に割って入った。
長くすらっとした指は、柔らかい胸をゆっくりと包んだ。

あとがき
取り敢えず狂気のヤマはココまでです(><)
これ以上の過激な表現は次回もないので・・・

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