蒼い狂気 5

その後もブルマは精力的に復旧作業に取り組んでいた。
仕事に没頭してしまうと、食事や睡眠すら忘れてしまうのはあいかわらずだったが、ひとつだけ変わったことがあった。
トランクスが四六時中ブルマに付きっきりになり、熱心に機械の事を調べたり、ブルマの仕事を手伝ったりした。
そして、止めなければどこまでも機械いじりを続けるブルマにコーヒーや食事を運び、その献身ぶりは周りの人々に少なからず驚きを与えた。
「いつものクールなトランクスがねぇ。ブルマさんのこととなると、すぐ熱くなるんだから」
トランクスは特に気にとめる風でもなく、出歩く時やコーヒータイムには、人目も気にせず周りが思わず目をつぶってしまいたくなるような行動をしていた。

例えば、こんなことがあった。
ブルマを歓迎するパーティをしてくれた時などは
(といっても簡単な夕食に、少量のアルコールがついた簡素なパーティだったが)
トランクスがブルマを自分の恋人だと公言してしまい、皆に冷やかされ、キスコールで盛り上がった。
「ちょっと!いくらあたしでもみんなの前でキスなんかできないわよ!」
「ぴゅーぴゅー!」
「いいじゃねぇか、ブルマさんよ。酒の席だぜ、盛り上げてくれよ!!」
「やーん、トランクスさん!ファンだったのにーー!」
普段が真面目なトランクスだけに、周りの人たちは異常な盛り上がりを見せた。
トランクスは始め顔を赤くして俯いていたが、ブルマと目があうとさっと引き寄せ耳もとでささやいた。
「みんなオレ達に期待してるみたいですね」
「でもあたし、キスなんてしないわよ」
ブルマも小声だが冷たく言い放った。
トランクスはいくらかキズついたようだったが、ブルマの挑発的ともとれる言葉に刺激され、なかば強引に唇をおしつけた。
そしてトランクスの舌がブルマの形の良い唇の中に侵入し、徐々に熱を帯びたように舌を絡ませてきた。
(照れ屋のくせに強引なんだから。でもあたしはそんな男のギャップに弱いんだわ。ベジータだってそうだし)

頭では冷静のつもりだったが、皆に見られている恥ずかしさと、容赦なく絡み合ってくる舌に次第に頭がぼうっとなり、ブルマは無意識にトランクスの胸に手を伸ばしていた。

トランクスの手がそっとブルマの手の上に重ねられ、自分の身体からやさしく引き離した。
ブルマはハッとした。

「や、やーねぇ!トランクスってば!」
周りのギャラリー(?)はあまりの情熱的なキスに呆然としている。

「そ、そうだよな!あのトランクスにこんなべっぴんさんの恋人が出来たんだ。そりゃぁ、ガマンも出来ないよな。若いんだしなぁ」
「わかる、わかる。俺もほしいなぁ、こんな嫁さん」
間の悪さをフォローするように、トランクスの仲間達が次々にアルコールをブルマに勧めた。
ブルマも美人と持てはやされ悪い気がしない。頭の片隅に、自分が帰ってしまった後のトランクスはどうなってしまうんだろうという気持ちが生まれたが、アルコールが効いてきたせいかブルマは考えるのをやめてしまった。

パーティが終わり、キッチンにはブルマとトランクスだけが残った。
「今日は西の都に帰りますか?あなたの家でもあるんですから・・・」
「ううん。ここで少し仮眠を取ってから調べものをするつもり。あんまり時間もないし・・・」
「でも、あなたはほとんど寝てないじゃないですか。今日くらい休んだ方がいいですよ」
「大丈夫よこれくらい。それよりトランクス、あんたさっき、うたた寝をしてたでしょ。あたしに付き合って起きてることはないのよ。あんたは帰りなさい。ブルマが寂しがるわよ。こう見えてもすっごい寂しがりやなんだから」
「母さんは明日の夕方まで仕事で帰えらないそうです。・・・母さんも無茶ばかりする人なんで・・・」
「ふーん・・・」
「そうだ、いい場所があるんですよ。ここからそう遠くないところなので行ってみませんか?ここのソファで仮眠するよりずっといいと思いますよ」
「何よ、そんなところがあるなら早く言ってちょうだい。あのソファ硬いんだもの!」
ブルマは、正直寝心地のいいベットが恋しかった。仮眠とはいえ床と寝るのと変わらないようなソファは、体の疲れがほとんどとれないばかりか、起きた直後は体の節々がギスギスしていた。

トランクスはブルマを抱き、空中へふわりと浮かび上がると、夜空をゆっくり横切った。
中の都はブルマがいる世界では都会だったはずだ。それがこちらでは街のネオンやビルから漏れる光すらない。
下を見下ろしても、真っ暗なだけで、街なのか海なのかも解らなかった。

「星も光もないのね、こっちの世界は・・・空も地もないみたいだわ」
「仕方ないんですよ。人造人間は環境そのものを変えてしまったんですから。まだこの辺は、昼間も青空が見えないんです。それに電力はまだまだ貴重ですから夜はほとんど真っ暗です」
「そうなの・・・」
「だから今母さんが皆に必要とされているんですよ。平和になっても、母さんの戦いはまだまだ終わっていないんです。オレも母さんの力になりたいと思っているんですが、まだまだで・・・」
「当たり前よ。あたし達は天才科学者だもの。・・・あんたは天才的な能力を持った戦士。ブルマはあんたにそんなもの求めてないわよ、きっと。」
「でもオレは、父さんの誇り高いサイヤ人の血と同時に、母さんの血もひいているんですよ」
「そうねぇ・・・はっきり言うけど、べジータの強さはしっかり引き継いだけど、あたしの天才的な頭脳はあんたにはないわね」
「は、はっきりいいますね・・・ちょっとショックです」
「ま、頑張れば秀才くらいにはなれるんじゃないの?センスはあるわ。あたしが仕込んであげたいけど、あとこちらにいられるのも4日しかないしねぇ」
「それでもいいです。少しでも母さんの役に立ちたいんです」
「随分母親想いねぇ。ちょっと妬けちゃうわ。ま、いいけどさ・・・。あたしがやることしっかり見て覚えなさい。ちゃんとポイントを教えてあげるから」
「ありがとうございます」
「ところでさ、まだなの?」
「はい、そろそろ着きますよ」
トランクスは暗闇に向かって降り立った。

「うーん、何にも見えないけど、カプセルハウスでもあるのかしら?」
ブルマはトランクスから離れると、ハウスを探してうろうろと歩きだした。
「違いますよ。ここです。」
トランクスは少し離れたところにある、大きな木の下までブルマを連れて歩いた。夜目が利くらしく、そこにある小さな岩やら木の根っこを器用によけていた。
「ここに座ってみてください」
「なによ、よく見えないわよ」
「結構気持ちいいんですよ」
トランクスはさっさとその場に寝っころがり、頭の上に腕を組んで枕代わりにしている。
「ここに寝るの?!・・・しょうがないわねぇ」
ブルマはしぶしぶトランクスの横に腰を下ろし、同じように寝転んだ。
背中に感じるふかふかした草の絨毯が、ひんやりとして以外に気持ちがよい。
「あたし、こんな風に寝っころがるの初めてだわ。確かにあのソファよりは気持ちがいいかもね」
「でしょう?あなたならそう言うと思いました」
トランクスは顔だけブルマの方に向けると、さりげなく自分の腕をブルマの首の下に入れ腕枕にしてあげた。
「ちょうどいい高さの枕でしょう?」
トランクスは得意げにしている。ブルマは何も言わず、くるりとトランクスの方へ体を向けた。
こうしているとトランクスに守られているような格好になる。
トランクスはブルマの髪をやさしく撫で始めた。
暗闇でトランクスの両目だけが光っていたが、深いブルーの瞳の色までは見えなかった。

「・・・」
トランクスに長い時間まっすぐに見つめられて、ブルマは少し狼狽した。
間が悪いというか、この後、自分はどのような行動をしたらよいのだろう。
相手がべジータなら、こんな優しい・・・まどろっこしい時間はまずない。
もちろんべジータは誰よりも自分を愛してくれているが(多分)、相手を気遣うような意思の確認はしない。

「あ、あのトランクス?」
「はい」
「もういいわ腕枕。重いでしょ?」
ブルマはトランクスの腕から、自分の頭をはずそうとした。

が、それは失敗に終わった。
トランクスがブルマの頭の下にある自分の腕をカクンと曲げ、自分の方に引き寄せたからだ。
自然、ブルマの顔はトランクスの胸のあたりに移動し、二人は密着するような形になった。

「今日はなにもしませんよ。安心して眠ってください」
トランクスはバカ真面目にそんなことを言った。ブルマはそれが可笑しくて、ついこちらから仕掛けてやろうといたずら心を起こしそうになったが、相手がべジータではないことを思い出してやめた。

全くべジータの反応はからかい甲斐があるというものだ。
その後の、怒ったような照れたような表情でブルマを征服してくるのも好ましい。
少々荒っぽいが、頭の芯まで攻撃されるような快感はべジータでしか味わえないんじゃないだろうか。
ブルマの経験は少ない方なので漠然と思っているだけかもしれないが。

この間抱かれて解ったことだが、トランクスもべジータに似ているところがある。
普段は真面目で何事にもストイックな青年なのに、こと自分に関する限り理性が吹っ飛ぶらしい。
サイヤ人の荒っぽい性格が前面に出て攻撃的になるのかもしれない。
(あたしったら、何考えてるのかしら?)
トランクスの腕に抱かれているからか、気が高ぶって頭が冴えてきてしまっている。
気が読めるトランクスには気づかれているかもしれないと思うと、もう眠ることなんてできなさそうだった。

トランクスはブルマの気が落ちつかなくったのを感じ取っている。
トランクス自身もその気に反応してしまいそうになるが、グッと理性で押さえつけた。
ブルマはここ数日ろくに寝ていないし、疲れている。
自分が抱けば、さらにブルマの体力を消耗させることは解りきっていたし、だからといって、穏やかに抱くことなんて出来そうになかった。

だから、しない・・・と言ったのだ。

「眠れませんか?」
「当たり前じゃないの・・・」
「どうしてですか?」
「どうしてって・・・あんたのせいよっ」
「オレの?」
トランクスは間抜けな質問をしてしまったと思ったが、自分のせいと言われては気になってしょうがない。少しハッパをかけてみることにした。
「オレの事を、男として意識しているから・・・ですか」

ブルマは一瞬身を硬くした。
どうやら図星なようだった。

「嬉しいです・・・」
トランクスはブルマをがばっと抱きしめ、髪の生え際や瞼にやさしく唇を押し付けていった。
トランクスの体重が次第にブルマに掛かり、苦しくなって身体をずらそうとしたが、トランクスはブルマの上に覆いかぶさるようにして、ブルマの顔の横に両手をついた。

ブルマは空を見上げる形になった。
先ほどより空の闇が薄くなったような気がした。

もうそろそろ・・・夜が明ける。

思慮深く、常に理性で動いているように見えるトランクス。
でもブルマには解っている。
本当のトランクスは、べジータや自分みたいにわがままで短気な性格だ。
でもそう振舞うことは、この世界が許さなかったのだろう。
仲間が死に、父親が死に、そして師匠の悟飯が死んだ。
たった一人残された戦士。
一人で未来を背負って戦うトランクスに、同じ年頃の持つような甘えは許されない。

ブルマの唇の形が、して・・・と動いた。
言葉にはなっていなかったが、トランクスには、はっきりと聞こえた。

トランクスはゴクリと喉をならした。
「あなたから、オレを誘ってくるなんて・・・思いもしませんでした」
返事はない。
その代り、ブルマは美しいまゆをひそめて横を向いた。
「あなたはいつも父さんのことを考えているから・・・オレの入り込む隙なんてないと思っていました。でも、あなたはオレを見てくれていたんですね」

トランクスの手が下半身まで伝い、複雑な動きで中指がブルマの中で曲げられた。
「あ・・・」
ブルマの息を呑む声は、トランクスの唇によってふさがれ、その時も指の動きを強めたり、早めたりしていた。

ブルマは心地よさと共に、軽いめまいを覚えトランクスにしがみついた。
頭の中には、もうべジータのことも、トランクスへの申し訳ない気持ちもなかった。
ただ、すばらしい快楽を与えてくれる、目の前の男を愛おしいと思った。

「あなたが好きです。ずっとここに残ってほしい・・・」
トランクスはブルマの両足の間に割って入ると、深く腰を沈めた。
ブルマの中は熱く、渦を巻くようにトランクスを引き込むと同時に、思考を他の次元へ飛ばそうとする。
ブルマは硬く目を閉じ、ときおり短い悲鳴をあげ、トランクスの肩に小さな引っ掻き傷をつけた。
その小さな痛みがトランクスを満足させ、さらに深い愉悦へと誘った。
「無理は承知の上です・・・でも・・・ここにいてオレの側にいてほしい」
トランクスの動きはさらに深く、鋭くなっていく。
そして時折、自分の快感を沈ませながら、ブルマの表情をうかがった。

ブルマの瞳からは一筋の涙が流れていた。
「・・・それは・・・できないわ。・・・あぁっ!」
ブルマからは拒絶の言葉と、快感から来る悲鳴が混じりあって苦しそうだった。
「父さんですか?・・・父さんがいるから・・・あなたは帰ろうとするんですね!」
トランクスはムキになってブルマを責めるように強く腰を打ちうけた。
燃えるような蒼い瞳はブルマを捕らえて離さない。トランクスの額からパッと汗が飛び散った。
「・・・トランクス・・・ごめんなさい・・・・」
「あなたは残酷な人ですね・・・」
トランクスの激しい動きに、ブルマはしなやかな腰を弓なりに反らせて、何度も果てた。

ブルマが目覚めた時、空はブルーグレーに変わっていた。
あれから気を失ったのか、眠っていたのか解らない。ただ、トランクスの侵入したその場所に、僅かに感触が残っていたからそれほど時間が経っていないのかもしれない。
トランクスは近くの岩に腰を掛け、片膝を抱えて空を見上げていた。
ブルマは自分に掛けられていたジャケットをつかむと、トランクスに近づいた。

「まだ寝ていたほうがいいですよ。夜明けまではもう少しありますから」
トランクスは照れくさそうに、さっと目を逸らした。
「よく寝たわよ、誰かさんのおかげでね。ジャケットありがとう」
「それは・・・どうも」
「あんた寝てないの?少しくらい寝ないと、あたしのスパルタ教育についていけないわよ」
「ははは、それは厳しそうですね・・・」
「ははは、じゃないわよ。こっち来なさい、膝枕してあげるから」
「え?い、いいです。」
「遠慮しなくてもいいのよ」
ブルマは半ば強引にトランクスを引っ張ると、自分の膝の上に頭を乗せた。
「あの・・・」
「なに?」
「さっきのことは気にしないでください・・・その・・・あなたにここに残ってほしいって言った事です」
「あたしが気にしてなくても、あんたが気にしてるじゃない。それで眠れなかったんでしょ?」
「あなたは、なんでもお見通しですね・・・」
「もう、いいから。寝なさい」
ブルマはトランクスのすみれ色の髪の毛をさらさらと撫でてやった。
その柔らかい手の動きに、トランクスは気持ち良さそうに目を閉じた。

そして、暖かくて、柔らかいものに包まれて深い眠りに落ちていった。

続く


あとがき
まだ続くの?!


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