トランクスが未来から来るのは、今回で3度目になる。
未来の世界の人造人間やセルを倒したことを報告するために、トランクスはタイムマシンに乗り込んだ。

「また、父さんや悟飯さん、そして・・・」
トランクスは愛しい人の姿を瞼の内側に映し、深いため息をついた。
(そして、また逢うことができる・・・あの人に・・・)

モニターに映し出された数字は、過去の世界で悟飯がセルを倒した後から一ヶ月後だ。
理由は悟空が亡くなってからすぐではあわただしいだろうという配慮と、
不安定なタイムマシンで、トランクスが到着する時代が狂い、セル戦が終わる前に到着しないようにだ。

トランクスの乗ったタイムマシンは、高度を上げ強い光と共に消えた。

紺碧の残像

第一話



ブルマはイライラする気持ちを発散させるように、ジェットフライヤーの操縦をしていた。
上品なブルーのミニ丈のワンピースから、スラリと伸びた足に思いっきり力を入れ、アクセルを踏みこんだ。

今日は孫悟空の結婚パーティに呼ばれていて、先ほどまで孫悟空とチチを祝福していたのだった。
しかし、こんなにめでたい日なのに、何故かイライラする気持ちをブルマは抑え切れなかった。
(あたしは何故、こんなに苛立っているのかしら)
ブルマは苛立ちの原因を考えてみた。
ヤムチャとは今日も派手に喧嘩をしてしまった。
いつものように些細なことが原因だったのだが・・・
でも自分は、ヤムチャと喧嘩をする前からずっと、イライラとしていたような気がする。

弟のように思っていた、チビの孫悟空がたくましく成長してブルマの前に姿を見せたかと思うと、
突然・・・本当に突然に、自分以外の男になってしまった。
ブルマは独占欲が強いほうではないし、孫悟空に恋愛感情を持ってはいなかったが、
寂しさを感じていた。
それがブルマを苛立たせる原因となっていたのだ。
ヤムチャとの喧嘩は、ブルマの八つ当たりが原因だ。

(今日はビールでも飲んで、パーッと遊んじゃうに限るわ!!)
ブルマはC.Cに向かって飛行していた、ジェットフライヤーのステアリングを自宅とは逆方向に切ろうとした。

突然、稲妻のような激しい光がC.Cの上空あたりでスパークするのが見えた。
「な、なによ、あれ?!」
決して自然現象ではないことはすぐに判った。かといって父親のブリーフ博士が何かの実験を行っているわけではない。
今日の結婚パーティーにはブリーフ博士達も出席していて、まだ孫悟空たちと食事や会話を楽しんでいる最中だろう。
嫌な胸騒ぎがしたブルマは、C.Cに向かってジェットフライヤーを飛ばした。

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トランクスはタイムマシンをカプセルに戻し、C.Cのインターホンを押した。
しかし、お手伝いロボットはブルマ達が不在だと告げる。
「しょうがないですね・・・」
トランクスは外壁沿いに、舞空術で浮き上がると重力室のある最上階へ向かったが、ある違和感を覚えた。
(・・・?いつもの重力室とは様子が違う・・・そういえば、父さんの気を感じない)
気を消していることも考えられたが、敵がいなければ、普段から気を消して生活することはしない。
実際、悟空やクリリンの気は、トランクスには感じている。
(父さんに何かあったのか?まさか・・・地球にはいないとか・・・。)
トランクスの父親、べジータは遠い宇宙にある惑星べジータという星の王子だったらしい。
惑星べジータが消滅してからも、広い宇宙で思う存分戦いを楽しんでいた。
ライバルの孫悟空が死に、地球にいることの意味を失くしたべジータが、母親や小さな子供を残して宇宙へ帰ってしまっていても不思議はない。
(父さん・・・あなたという人は!!)
トランクスは、自分達を捨てたべジータに怒りを感じた。
(勝手すぎますよ!あなたは!!)
自分がセルに殺された時、父親のべジータは無謀にもセルに立ち向かっていったと聞いた。
それを聞いたとき、トランクスはあんな自分勝手で、冷たい男でも自分の父親だと認め、そして尊敬もした。
だが、しかし・・・

トランクスの中に、ざわざわとした怒りの感情が疼きだした。

「ちょっとー!そこのアンタ!!そんなところで何やってんのよ!!!警察呼ぶわよ!!」
中庭からこちらを見上げ、馬鹿でかい声で自分に向かって叫ぶ女性がいた。
ブルマだ。
「降りてきなさいよーー!!」
どうやら自分を不審な輩と勘違いをしているらしい。
トランクスはブルマの前へ、静かに降り立った。

「あ・・・どうも・・・」
トランクスは照れくさそうにブルマを見た。
「どうもじゃないわよ。あんたそんなところで何やってたのよ!」
「先ほど伺ったら、留守だっていうもので・・・つい」
「何?父さんの知り合いだったの?なんだ、そうならそう言ってよ。父さんは今日は遅くなるわよ」
ブルマはそう云うと、トランクスの顔を見た。
(あら?父さんの知り合いにしちゃ随分と若いわね・・・。
それに・・・良くみればいい男じゃなーい!!きっと科学者のタマゴなのよ!もしかしたら研修生かもしれないわvv)
ブルマには、昔からいい男には目がなく、やっかいなことにいい男であれば悪い奴も正義の味方だと思ってしまう癖があった。
今も自分好みの男だと判った途端、先ほどの邪険な態度を180度変えた。
「ま、中に入りなさいよ。ビールでも飲んで待ってれば?」
ブルマは青年の腕を取り、リビングへ案内した。
「あ、あの・・・」
トランクスはもしかして行くべき時代が違っているのかもしれないと思った。
そういえばブルマの髪も随分と長くなっている。
最後に別れたときから、こちらの世界では一ヶ月しか経過していないはずだから、ブルマの髪の長さは不自然すぎる。
(そうか!父さんはココから出て行ったのではなくて、まだこの地球には来ていなかったのか!)
トランクスは舌打ちしたい気分になりながらも、目の前の自分とそう年も変わらなさそうな・・・いやもしかしたら自分より若い母親を見て、タイムマシンでこの時代から今すぐ去ることをためらった。
(念のため、時代の確認をしてみるか)

「あの、今は何年ですか?」
「は?」
トランクスはあまりにも突拍子もなく、間抜けな質問をしたと思い、言葉を付け加えた。
「ですから・・・えーと。
最近あった大きな出来事や事件を教えていただけませんか?」
「事件?なに?アンタのう家はテレビがないの?あ、もしかして貧乏苦学生?
でもアンタ頭良さそうだから、父さんに認められてC.Cの研修生になったのね!!」
「はあ・・・」
「あ、事件ね、事件。そうねぇ。
そうだ!ピッコロ大魔王から孫悟空が世界を救ったことかしら!!
いくらテレビや新聞がなくても、あんただってピッコロ大魔王のことは知ってるでしょ?」
「ピッコロ・・・さん?ですか」
「ピッコロさん?あんたピッコロ大魔王の知り合い?」
「え!い、いえ!!」
「そうよねー。アンタみたいないい男がさ、ピッコロの仲間の訳ないわよねー」
トランクスは苦笑いをした。
どうやら、自分は随分と過去に来てしまったようだ。
「悟空さんが、チチさんと結婚したあたりですね・・・」
トランクスの頭の中で時代が符合した。
「そうよ!そーなのよ!たった今、その結婚パーティーから帰ってきたところなのよ!!!
でもさ・・・あんた孫君はともかく、チチさんのことも知ってるの?!」
「ええ、少しは・・・」
トランクスは適当に誤魔化した。

それにしても、ブルマのこの若さと美しさは、なんと表現してよいのだろうか。
少女から大人の女へと変身したばかりの、美しい蝶のような羽をもった女性。
艶やかさと、無邪気さが入り混じった独特の雰囲気は、次第にトランクスを息苦しくさせた。

(やはり、元の時代に戻り、また出直そう)
トランクスはそう思い、ブルマに別れを告げた。
しかし
「えー?もう帰っちゃうの?いいじゃないの、父さんが帰ってくるまで待ってなさいよ。
遠慮することないわよー。
・・・それにさぁ、あたしも話し相手が欲しかったのよ・・・今日はさ」
ブルマはそう云うと、ふっと寂しそうに目を伏せた。
トランクスはその表情に見とれた。
(あなたはなんという顔をするんだ・・・)
トランクスから向けられる視線に気づいたブルマは、顔をあげニコッと笑顔を見せた。
「あんた、名前はなんていうの?」
「それは・・・」
トランクスは自分の名前を云うことをためらった。
しかしこの姿を見られているなら、名前を告げようが告げまいが変わらないだろうと思い、
トランクスは素直に自分の名を名乗った。
「へぇー、トランクスっていうの。変わった名前ねー」
ブルマは目を丸くして驚いていたので、トランクスは内心は複雑な心境だった。
(その名前をオレにつけてくれたのは、他でもないあなた自身なんですよ・・・)
しかし、そんなことを云えるはずもなく・・・トランクスは黙って俯いた。


続く


あとがき
未来トラが、自分より年の若いブルマを見たらどうするだろうと思って
このSSを書き始めました。
アブノーマルワールド、始動です(><)q

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