雨と夢のあとに

世界は突然暗闇の中に閉ざされた。
たった2人の美しい人造人間達の手によって・・・
美しく青い空と、緑の大地はことごとく破壊され、その影響により空からは黒い雨が降ってきた。破壊された街には大量の死体が片付けられることなく散乱し、全ての機能が停止した壊滅状態の都市もあった。

人々を苦しめたのは人造人間だけではなかった。
じきに食料難に襲われた。それから、伝染病の流行。
自暴自棄になった人間達はモラルを失った。
地獄。
まさに地獄だった。
かろうじて生き残った人々は人造人間たちの攻撃を恐れ地下に潜伏し、息を潜めて暮らしていた。 その中で、光を取り戻すために命を懸けて戦っていた戦士達がいた。
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人造人間が現れたという知らせを受け、べジータは地下シェルターから飛び出そうとしていた。
「べジータ、待って!」
「なんだ、ブルマ!」 べジータはうるさそうにブルマを振り返った。
「べジータ、死んじゃだめよ。お願い死なないで!嫌な予感がするの、危なくなったら逃げるのよ!」
「フン、逃げるくらいなら死んだほうがマシだ」
べジータは短く答えると、出入り口にあるロックスイッチを押してシェルターから飛び出した。
「べジータ!待って、べジータ!」 ブルマの声は殺風景なシェルターの中で空しく響き渡った。


「べジータさん・・・来てくれたんですね・・・」
孫悟飯は少年型の人造人間と組み合っていたらしく、ボロボロになって瓦礫の下に倒れていた。
「ははは!また新しい奴が来たぞ、18号!しばらくは楽しめるかな」
「アンタはさっき十分遊んだだろ?今度はアタシにやらせなよ!」
「いいさ、お前はべジータが大のお気に入りだからな」
「くすっ。あんただって孫悟飯がお気に入りみたいじゃないか」
18号と呼ばれた少女型の人造人間は、べジータに向かって数発の気弾を放った。 爆発音と共にべジータが光の球に飲み込まれ、側に倒れていた孫悟飯も風圧で吹っ飛ばされた。
もうもうとしていた煙が晴れ、べジータの輪郭がうっすらと現れた。 多少戦闘服が破れていたが、べジータ自身にダメージはないようだ。
「フン、貴様のパワーはこんなもんじゃないだろう」 べジータはニヤリと笑った。18号もそれに答える。
激しい肉弾戦がはじまった。 二人のパワーは全く互角に見えた。
「べ、べジータさん・・・」
空中で激しくスパークする18号とべジータを目で追っていたが、悟飯は既に体を動かす力は残っていなかった。
「まだまだだよっ」
徐々に18号が押してきている。サイヤ人とはいえ、生身の人間であるべジータは少しずつ後退してきた。
その時、
ドカッ!!!!
美しい外見からは想像もつかない、18号の重い一撃がべジータのみぞおちに入った。
「ぐっ・・・!!!!!」
「べジータさん!」
べジータは空中でくるりと弧を描いて、体制を立て直すとすぐさま反撃を開始した。
「オレをなめるな!!!」
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ブルマは落ち着かない様子で、殺風景な部屋の中をウロウロと歩き回っていた。
(・・・なにかしらこの感じ・・・イヤな予感がする・・・べジータ!)
ブルマはこの壁の外で戦っているであろう、べジータの気を探ってみようと思い精神を集中させた。
いつもべジータや孫悟空がやっていたように。
(あたしも皆みたいに気が探れればいいのに!)
しかし、なにも感じることができない。ブルマは気を探ることをあきらめ、小さくため息をついた。
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「おーい、18号!そろそろ交代しようぜ!」
17号はぐったりしているべジータに思いっきり蹴りを入れた。
「邪魔するなよ!17号!」
べジータは既に超サイヤ人ではなくなっている。 ボロボロになりながら18号の攻撃をかわしていたが、相当のダメージをくらい、プライドだけがべジータを支えていた。
「ちぇ!つまんねーの。でも殺しちゃダメだぞ!そいつが復活したら今度はオレが遊んでやるんだから」
「イヤだね、あんたは孫悟飯と遊んでなよ!」
18号はべジータの首を自分の腕に挟み込むと、ひそひそ話をするようにべジータの耳元で囁いた。
「今日は特別に見逃してやってもいいよ。あんたと遊ぶの楽しいからね」
「・・・ふざ・・・けるな・・・」 べジータの目はうつろに開かれ、視点が定まっていなかった。
「そうそう、カプセルコーポレーションの娘って、あんたの大切な女なんだろ?知ってるよ、科学者なんだってね?」
突然ブルマの名前を出され、べジータはカッと目を見開いた。
「ははははっ。素直な反応だねべジータ。面白いことを思いついたよ!」
べジータから腕を解き18号はその場から去ろうとしたが、とっさにべジータに腕をつかまれた。 18号は振り返り、そして、氷のような冷たい微笑を浮かべた。
「アタシ、科学者って大嫌いなんだよね。ゲロの奴も殺してやったんだよ。せっかくだから、その女もあんたの目の前で殺してあげるよ。素敵だろ?」
「ははははっ!面白いゲームじゃないか、18号!」
首にスカーフを巻いた少年型の人造人間も楽しそうに笑った。
「き・・・さま・・・」べジータはつかんだ腕に力を入れた。
「おや、まだそんな力が残ってたんだ。でもあんまりしつこい男はキライだよ。たかがゲームじゃないか。アンタだってさ人を殺すのがスキなんだろう?その科学者はどんな風に殺してほしい?」
18号はべジータの顔面に蹴りを入れると、ふわりと宙に浮き、西の都の中心部を探すようにぐるりと見回した。
「ぐっ!!」 べジータは立ち上がり、18号を見上げた。
「貴っ様ー!!ゆ・・・ゆるさんぞー!!!」
べジータは最後の力を振り絞るように気を上昇させると、両手をまっすぐに伸ばし、18号に向けて大きく気を放った。

「べジータさん!やめてください!!!」
大きく膨れ上がっていく金色の気に、悟飯はべジータの命の炎が消えていくのを感じた。
「べジータさーーーん!!!!!」
音もなく、静かに崩れゆくべジータの姿だけが、いつまでもスローモーションのように悟飯の瞼に焼きついていた。
悟飯は泣き叫び、激しく拳を地面に打ち付けた。

空からは黒い雨が降り出していた。



あとがき
ドラマ「雨と夢のあとに」を見て書きたくなったので、タイトルはそのまま使っちゃいました。
毎回ヒネリがないですね(><)

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