惑星ベジータ 4

ブルマとトランクスは、バーダックに連れられ、サイヤ人達の宇宙船のあるコンピュータールームへと向かっていた。

2人の前を歩く、孫悟空そっくりなバーダックを見てブルマはトランクスに小さな声で言った。
「あいつ、顔は孫くんそっくりだけどさぁ、雰囲気がちょっと素敵だと思わない?」
「・・・ママ。そんなことボクに聞かないでよ。パパに聞かれたら殺されちゃうよ」
トランクスは、こんな時でもいいオトコに目がない母親に、ちょっとあきれながら後をついていった。
(オレはママが何を考えてるかわかるぞ・・・。
ママが悟天のオヤジのことを気に入っているのを知ってるんだ。)
トランクスの杞憂もむなしく、ブルマはバーダックを質問攻めにした。

「ねぇ、ちょっとあんた」
バーダックは振り返ることもなく、ブルマを無視してスタスタと歩いていく。
しかし、ブルマはべジータの無反応に慣れているので、そんなことはお構いなしで弾丸のように喋りだした。
「孫くんはとぼけたところがあるけど、父親のあんたは随分と違うのね。ラディッツも孫くんのお兄さんとは思えないほど悪い奴だったけどさ。
あんたさ、奥さんとかいるの?やっぱり、サイヤ人って冷酷だし家族なんていないのかしら。
そうよね、べジータがあんなだもの。」
長い通路に、ブルマの話し声と3人の足音が響く。

しばらく歩いていくと、サイヤ人と同じプロテクターをした人型の宇宙人が一列に並んで立っていた。
バーダックを確認すると恭しく頭を下げた。
その中の、鳥のくちばしのようなものを持った宇宙人がバーダックに話しかけた。
「バーダック様、その者たちを乗せる宇宙船のご用意ができております。3番ゲートへお進みください。」
バーダックは何も言わずに、重々しく開いた扉をくぐり、3番ゲートと思われる通路の扉のスイッチを押そうとした。

その時。
ブルマがすっとんきょうな声をあげた。
「ねぇ、あれあれ!」
ブルマはバーダックから離れ、大きな柱のようなものに設置された画面を隅々まで見回した。
「おい、勝手な行動はするな!」
バーダックはブルマの腕をとって、引き戻そうとした。

「わかったわ!これは宇宙にある星の配置だわ!ここの隅にあるのが銀河系で・・・多分・・・地球はこれね!」
グリーンの画面にいくつもの軸があり、丸い点が配置してある。
よく見ていると、その丸い点が赤く点滅し消えていく。
ブルマが地球だと検討をつけた丸印が、赤く点滅しだした。

「ちょっと、あんた。これってなんて書いてあるの?」
ブルマは赤く点滅した丸の下に書かれた文字を指差した。

「ターゲット」
「え?」
「オレ達が攻める星だ。べジータ様を惑星べジータに残すために、地球を破壊するんだろうさ」
「!!そ、そんな・・・」
ブルマは腰を抜かさんばかりに驚いたが、すぐ気を取り直した。
「そんなことしたら、あんたの息子の孫くんだって死んじゃうのよ!!孫くんだけじゃないわ!あんたの孫の悟飯くんだって、悟天くんだって死んじゃうのよ!」
「カカロットはこの星に連れ戻すさ」
「・・・孫くんはりっぱな地球人よ!地球のためにフリーザって奴も倒しちゃったんだから!!」
「・・・知っている。」
「知ってるならやめた方がいいわよ、ね?サイヤ人が行ったって皆やっつけられちゃうわよ。あんただって、自分の息子に仲間を殺されたくないでしょ?」
「べジータ王が決めたことだ」
「王って、べジータの父親の・・・」
「そうだ」

ブルマはバーダックの声の調子や、目の動きから僅かな心のゆれを感じ取った。
(このバーダックって人は地球を攻めたくないのかもしれないわ。べジータがあたし達のことをこの人に預けたのも、何か意味があるのかも・・・)
ブルマは考えすぎかとも思ったが、自分の直感を信じることにした。
幸い、バーダックは通信機にもなっているスカウターをしていない。

「あたし達に協力してちょうだい。・・・バーダックさん」
「何!?」
「このコンピューターに侵入して地球のデータを抹消するのよ」
「ここにいる連中はあんまり賢そうじゃないもの。こーんな隅っこにある偏狭の星のデータがなくなったって、誰も気づきやしないわ。それに、王様には地球を破壊したことにして報告すればいいじゃないの」
「バカな。」
「孫くんの守っているものを壊したくないでしょっ?あんたの仲間を自分の息子にやっつけれたくないでしょ?孫くんは超サイヤ人になれるのよ。」
「・・・」
バーダックは何も言わない。
ブルマはそれを了ととった。

「トランクス、あたしがいいって言ったら、ここにいる連中を倒しちゃって。あ、でも殺しちゃダメよー。気絶させるだけでいいから」
ブルマはトランクスにボソボソと耳打ちした。
「わかったよ、ママ。」
トランクスはいつでも良いよという風に、チラリとあたりを見回した。

ブルマは監視カメラの位置確認したが見当たらなかった。
サイヤ人はそれほどセキュリティーに感心がないのか、必要ないのかは解らなかったがブルマはしめたと思った。

ブルマはバーダックを見たが反応がない。
やっぱりダメかしらと思ったが、どうせ地球が破壊されるならここで殺されても一緒だ。
どうにもナメック星以来、度胸が据わってきてしまっているようだ。

「トランクス、いいわよ!」
「オッケー!」
トランクスは超サイヤ人になると、あっという間に気絶させていった。
あまりのスピードに、バーダックも、倒されていく奴らにも何が起こったかわからないようだった。

「バーダックさん!これは?なんて書いてあるの?!」
「・・・」
「どけ、オレがやる!」
バーダックはブルマを跳ね除けると、キーボードを叩きだした。

「いったぁ・・・」
床に打ち付けられた腰をさすりながら、バーダックの操作する画面を脇から覗き込んだ。
「ダメだ、これ以上は進めない」
「まかせて、あたしはプロよ。どんなコンピューターでも侵入して見せるわ!!」
ブルマの目がキラリと光った。

バーダックに文字を読んでもらいながらなので、多少時間がかかったが数字を覚えてしまえばどうってことはない。
しばらくすると、メイン画面から地球らしき印が消えた。

「やったぁ!」
ブルマとトランクスは手を取り合って喜んだ。バーダックは苦い顔で二人を見ていたが、べジータが何故、この女に子を産ませたか理解できたような気がした。力はないがサイヤ人の役に立つ。その頭脳はツフル人ほどではないにしろ、サイヤ人が欲しがる知識を十分持っている。

「さ、べジータが来たら皆で地球に帰るわよー!!」
ブルマとトランクスは、はしゃいだようにゲートに向かおうとした。

その時、通信モニターからピピッという電子音が鳴った。
バーダックはそれを取ると短い返事をし、通信を切った。

「残念だが、べジータ様はこちらに残られるそうだ。お前達だけで地球に帰れとの命令だ」

一瞬、空気が凍りついた。
殺風景なコンピュータールームで耳障りな機械音だけが鳴っていた。
(べジータが・・・あたし達を捨てる・・・?)

先に口を開いたのはトランクスだった。
「パパがそんなこと言うわけないだろ!ママ、こいつらオレ達が邪魔でパパと引き離そうとしてるんだよ!」
ブルマもそう思っている。
惑星べジータの繁栄に王子であるべジータは必要不可欠なのだろう。
その為には、純粋なサイヤ人でないトランクスも、異星人の女も邪魔なだけだ。
べジータの前では殺すことができないから、地球へ返してから星ごと消すつもりだったのかもしれない・・・

ブルマは怒りを感じた。
べジータと自分を引き離そうとする、べジータ王と、神龍に惑星べジータの復活を願ってしまった自分に。

べジータは口にこそ出さないが、自分とトランクスを大切に思っている。
その自分達を、これから破壊される予定だった地球へ帰れと言うことはありえない。

ブルマが無言でいると、バーダックは無情に口を開いた。
「べジータ様直々のご命令だ。あきらめろ」

「そんな、ウソよ!べジータが・・・あたしを」
「貴様にウソをついてどうする。地球ルートのインプットはやってやるから、来い」
バーダックは暴れるブルマを担ぎ上げると、宇宙船のあるゲートまでスタスタと歩いていった。
あわててトランクスが後を追う。攻撃してやりたいが、母親にも危害が加わってしまうので攻撃はできない。
それに孫悟空や、仲良しの悟天と同じ顔のバーダックに向けて気功波を打つことはためらわれた。

ブルマ達を乱暴に宇宙船に放り込むと、バーダックは小さな画面に向かって数値を入力した。
「いったぁい。もうちょっと丁寧に扱いなさいよ!」
「この宇宙船は一人乗りだからな。貴様ら二人だと多少窮屈かもしれんがガマンしろ」
バーダックはニヤリと笑うと扉を閉めた。
「ちよっと!いくら孫くんの父親だからって許さないわよ!べジータはちゃんと帰ってくるんでしょ?ねえってば!」
ブルマの言葉も空しく、宇宙船はものすごいスピードで宇宙へ向かって飛び出した。

バーダックの姿はあっという間に見えなくなり、ブルマの目の前には真っ赤な惑星べジータが暗闇にぼうっと浮き出ていた。


その頃、惑星べジータでは・・・
べジータの周りに集まったサイヤ人達がべジータの言葉に耳を傾けていた。





あとがき
バーダックの言葉使いどんなんでしたっけ?
当時スペシャルで見たっきりなので思い出せません(><)
こんなのバーダックじゃないぞっ!てお叱りを受けそう。

追伸。 
web拍手で「惑星べジータの続編を楽しみにしています」と天使のようなメッセージを残してくださった方。
本当にありがとうございます。涙がでるほど嬉しかったです(ユ ユ)

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