若社長の憂鬱 2

C.Cは現在、宇宙事業に力を注いでいた。
ブリーフ博士が世界最速のエンジンを作ってからというもの、宇宙船エンジンの約62%のシェアを誇り、ブルマの代になってからは、ほぼC.Cの独壇場になっていた。
もちろんそれはサイヤ人の乗ってきた宇宙ポッドや、神様の宇宙船がベースとしてあったからなのだが・・・。


トランクスは、毎日深夜まで膨大な資料に目を通していた。

「トランクス、あんまり根詰めないほうがいいわよー」
ブルマは熱いコーヒーを差し出した。
「ありがとうございます、母さん。でも・・・もう少しやっていきますので、母さんは先に帰っていてください」
「わかったわ。でもね、トランクス・・・あんた最近余裕ない顔してるわよー。トップに立つ人間がそれじゃあ社員は不安よね」
「え?」
「あんたの仕事は決断することと、責任をとること。外面だけでもどーんと構えていたほうがいいわよ」
ブルマはニッコリ笑うと、自分のカップにもコーヒーを注いだ。

トランクスはブルマを見上げた。
今日のブルマの装いは、上品なブルーのスーツでタイトスカートは膝上丈で深いスリットが入り、そこからスラリとまっすぐに伸びた足は思わず目がいってしまうほど綺麗だった。
形良く張った豊満な胸元には、小ぶりの3連のブルーダイヤが輝いている。
そして、そのダイヤに負けないくらいに澄んだ蒼い瞳は、いつも強い生命力にあふれていた。
この目に捕えられたら、誰も逃げることができないんじゃないかとトランクスは思っている。
「何?」
ブルマは無遠慮に自分に向けられる視線に少し戸惑った。
「・・・いえ、なんでもありません」
「そう・・・。じゃ、あたしは帰るわよ。あ!そうそう、明後日は開発者に向けての講演があるんだから、ちゃんと寝ときなさいよ」
「え・・・?オレは出席するだけだって言ってませんでした?」
「そうよ。でもカメラが入るのにあんたのその顔色じゃいい男が台無しじゃない。全国のトランクスファンが泣くわよ。ふふっ」
ブルマは手をひらひらとさせると、おやすみの投げキッスをし、部屋から出ていった。

トランクスはふぅっと小さくため息をついた。

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ブルマは講演のスライドに目を通していた。
トランクスには根詰めるなと言っておきながら、自分も睡眠時間を削って仕事をしているのだから始末におえない。
しかしCEOになってから初めての講演だ。
4,000人の開発者を前に、講演し質問も受け付けるのだから準備はしっかりとやっておきたかった。
質問は事前に聞いておいて、あらかじめ答えを用意しておく方が楽だったがブルマはあえてそれをしない。
たまに意地の悪い質問や指摘もあるが、ブルマはそれを鮮やかに切り返し、それがまた開発者達の信頼を得ていたことを実感していたからだ。

「よし、スライドはちょうど1時間ね」
ブルマは時計を見た。
すでに午前3時をまわっていた。
「寝不足はお肌に悪いんだけどねー」
独り言を言ったつもりだったが、どこからか答えが返ってきた。
「だったらさっさと寝やがれ」
「べジータ、あんたいつからそこにいたのよ!」
気配がなかったので、べジータがいたことにまったく気づかなかった。
「そんなことはどうでもいい。最近の貴様は気が乱れているぞ」
「へ?気?」
ブルマは思いもかけないべジータの言葉に、間の抜けた返事をした。
「貴様は戦っているんだろうが。気のコントロールが出来なくて勝てるか」
べジータはブルマの戦いのヤマを迎えていることを知っていた。
べジータの戦いとは違うが、ナンバーワンになるためのトレーニングやプライドを掛けた戦いは、ブルマも同じだということはわかる。
「そうね・・・ちょっと焦ってるみたい」
「フン。ろくなことにならんぞ」
「そうね・・・。今日はもうクローズにすることにしたわ」
ブルマはべジータの頬にチュッとキスをした。

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トランクスは6時に目が覚めた。
講演は15時からなので、2時間前までに南の都に到着すれば良い。
トランクスの武空術で移動すれば、少し余裕をみても10分もあれば十分だ。
ブルマは一足先にジェットフライヤーで自宅を出ていた。
たいていの場合、ブルマはミクロバンドで小さくなりトランクスのポケットに入って移動するのだが、
今日はハイヤーがくるからと、現地で待ち合わせとなった。

トランクスは朝のトレーニングのために、ウェアに着替えると重力室へ向かった。
重力室では既にべジータがトレーニングを開始していた。
「遅いぞ、トランクス!」
「すみません父さん」
「フン。貴様は最近トレーニングをサボり気味だからな、今日はとことんしごいてやるぞ」
べジータは重力を一気に300Gまであげた。
「くっ」
トランクスはガクンと膝をついた。
ちょっとトレーニングをしていないと、すぐに体がついていけなくなるようだ。
(まいったな、たった3日トレーニングをしていないだけなのに・・・)
「どうした、トランクス。たったの300Gだぞ!」
トランクスは呼吸の乱れを整えると、ゆっくりと立ち上がった。
「平和になったからといって、修行をしなくてもいいということではない。貴様もサイヤ人の血が流れているなら戦いを忘れるな!」
べジータはそう言うと、トランクスに容赦なく拳を繰り出した。
トランクスはかろうじて一発目をカバーしたが、後の数発はまともにくらってしまった。
「くそっ」
壁に激突する寸前、トランクスはくるりと回転し、タンっと壁を足で蹴って反撃に出た。
が・・・あっさりとべジータにかわされ、おまけに強烈な蹴りがみぞおちに入った。
「ぐぁ」
トランクスは腹を抱え、両膝を地面に着けた。
べジータは冷たい瞳でトランクスを見下ろしている。
「チッ。もういい。貴様ではトレーニングにもならん。さっさと出て行け!」
べジータは重力装置を切るとトランクスを外に放り投げた。

(まずいな・・・)
トランクスは鏡の前で唸った。
べジータに殴られた後が残っている。ブルマに顔色のことを言われたのに、さらに傷までこしらえて行ったらなんといわれるだろうか。
そういえば、今日の講演はテレビ局も来るといっていた。
ブルマ同様、トランクスも社長に就任してから初めてといってもいいイベントだ。
きっとマスコミも呼んでいるに違いない。その社長が喧嘩のような傷が顔にあったらいくらなんでもまずいだろう。
トランクスは顔を氷で冷やしたが、べジータの強烈な拳の痕はしばらくは消えそうにもなかった。




あとがき
現代トランクスの青年バージョンってどんな喋りかたなんだろう?
GTだと丁寧な感じのようだけど・・・
チビトラは生意気だったのになんで大人しくなっちゃってさ・・・


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